ボーダーライン
そういえば、友情と恋愛感情の境界線は何処なのだろう。
自分を大事に思ってくれる、だいすきでだいすきでだいすきな同性は親友なのか、はたまた恋人なのか。オレがあいつに抱くこの感情は、いったいどちらなんだろう。
「どう思う?山本」
不意にオレに名を呼ばれた相手は此方に顔を向け、何の話だというように…なんというか…そう、物欲しげな眼で俺を見下ろした。
…同い年なのにそんな風にされると、なんだか子供扱いされてるみたいで、いやだな。
「だから、友情と恋愛感情の境界線ってどこなんだろうって話。…聞いてた?」
横に並んで歩くオレ達の後ろには、同じように長く長く伸びる影が楽しそうに上下している。
いつもその間に無理矢理割って入ろうとするつんつんとした影は、今日は現れない。
「んー…どうなんだろうな」
山本は困ったように笑って、それから後ろ首のあたりをぽりぽりと掻いた。
これはこういう時の、山本の癖。
たとえば数学の誰かの法則のように、たとえば科学のどこかの公式のように、誰かがきっちり決めてくれれば、どんなに楽なんだろう。誰かが教えてくれれば、どんなに納得できるだろう。
「でもさ、ツナ」
暫くうーん、と唸って答えを探していたらしい山本が、不意にオレに声を掛けた。
顔を上げて山本の方を見上げれば、「オレって馬鹿だから、よく分からないけどさ」と言ってから、にかっ、といつものように笑って(ぎこちなくしか笑えないオレとは正反対の、自然な笑顔)、そしてそのまま続けた。
「…ん、やっぱなんでもねーわ!」
そういえば、友情と恋愛感情の境界線は何処なのだろう。
自分を大事に思ってくれる、だいすきでだいすきでだいすきな同性は親友なのか、はたまた恋人なのか。オレがあいつに抱くこの感情は、いったいどちらなんだろう。
(いつものかったるい授業みたいに、誰かが決めてくれれば良いのに)