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貴方と君と、ときどきうさぎ

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《で、あそこのスイーツはすっごくすっごくおススメですよ!》
[へえ、今度買ってきてもらおうかな]
{おいしそうです}
《なかでも限定200個シュークリームがもうすっごい美味しくてすぐに売り切れちゃうんです》
[シュークリームなのに!]
{すごいです}
《カスタードクリームがいっぱい入ってて病みつきになっちゃいますよう!》


うーん、なんだか入りにくいな。三人とも楽しそうに話している。
毎度の事ながらこういう時臨也さんってすごいよな、本当に女子みたいな会話だし。
あ、今は甘楽さんか。

臨也さん、楽しいのかな。
…僕以外の人とこんなに楽しそうに話している。
でも僕はそこにはいない。混ざりたいけど、混ざりにくい。
そんな事気にするような間柄じゃなかったのに。
心の奥がチクンと痛む。段々もやもやしてきた。
こんなこと、考えちゃいけないのに。
僕が真剣に悩んでるのに何仲良く話してるんだよ…って
な、何考えているんだセットンさん達にこんな…こんな嫉妬みたいなこと……!!
僕ははっと我に返り小さく頭を左右に振った。

[甘楽さんって本当に幅広いジャンル色々知っていますよね]
《えへへーもっと褒めて褒めてー!》
{すごいです}
{かんらさん}
《やだもう甘楽すっごくすっごく嬉しいです!もっともっと褒めてくれても
いいんですよ》

…嫉妬、だよなあ。
はあ、と深く溜め息を付いたと同時に腹の虫が鳴った。買い置きのカップラーメンが
あったはずだしもうそれでいいや。僕はパソコンから目を離しゆっくりと立ち上がった。
お湯を沸かそうとやかんに水を入れようとした時だ。階段を上がってくる足音が聞こえて
くるじゃないか。この時間に珍しい。隣人でも帰って来たのかな?と思ったがその足音は
僕の部屋の前で止まったように思えた。予想は当り。ドンドンとドアをノックされた。
「鍵開いてるでしょー?物騒なんだからちゃんと閉めておかなきゃ駄目だよ」
どきりと心臓が飛び跳ねた。ドアの向こうから聞こえたのは二週間ぶりに聞いた
あの人の声だったからだ。
「い、臨也さん!?」
駆け寄ろうとしたが「動かないで。勝手に入るから」の一言と共にがちゃりと
玄関のドアは開いて姿を現した。
「じゃーん!今日は俺が帝人君専属のお世話係でーす!」
何やら買い込んで膨らんでいるスーパーのロゴが入ったポリ袋を持ち上げて
にっこりと笑った臨也さんが。
「は!?」
僕はすぐに足を庇いながらパソコン前に移動してチャットホームを見た。


《あ、ごめんなさーい!ちょっと用事できちゃったので今日はこれで落ちますね!》
[はーい]
{おつかれさまでした}


そんな文字が流れて臨也さんは器用に右手で携帯をいじっている。
チャットを見ていた事を知られたくなかった僕は慌ててチャットフォームを閉じた。
「足の捻挫大丈夫?」
「あ、は、はい。軽い捻挫ですから。それよりも何を買い込んできたんですか?
どうしたんですかそれ」
「その足で夕飯をカップラーメンで済まそうとする君のために俺が夕飯を作りに
来てあげたの」
「ええ!?」
本日二度目の衝撃。
「まあ大人しくテレビでも見てなよ。あ、エプロン貸してくれる?」
「え?あ、は、はい。えっと─」
「座ったままでいいよ。……押し入れかな。勝手に開けるね」
辺りを見回して臨也さんは押し入れの襖を開けた。
「すみません、そこの衣装ケースの一番上に入っています」
臨也さんは衣装ケースからブルーのエプロンを取り出して着ると腕まくりをして
小さなキッチンに立った。蛇口を捻る音と共に水が流れ流しに落ちる音が耳に届いた。
「あ、あの臨也さん?」
「なにー?」
どうしてこうなった。なんで臨也さんが
突然僕の部屋で料理なんて作り始めたんだ。気まぐれ?ただの気まぐれ?
でもエプロン姿の臨也さんなんてとても新鮮で貴重だ。そして無駄に似合う。
「ていうか湯沸かし器とかないのこの部屋」
「ありません」
「今は水でも平気だけどさ冬場とかどうすんの」
「お湯を温めて使えばいいんです」
「うわ…」
「なんですかその貧乏かわいそうみたいな顔無性に腹が立つんですけど」
僕が足を庇いながら立ち上がると臨也さんはこちらをちらりと振り返った。
「座っててよ」
「ありがとうございます。でも大丈夫です」
僕は何を作るのか気になって彼の隣に立った。
「…あの、本当に臨也さんが作るんですか?」
「勿論。今日は折原臨也特製ハンバーグ作るんだから楽しみにしててよ。
サラダとかは買ってきちゃったけど大目に見てよね」
ポリ袋から合挽肉、玉ねぎとパン粉が次々と取りだされていく。
結構手の込んだ料理を作るつもりなんだ。
「なに、やっぱり肉より野菜の方が好き?キャベツとかにんじんとかキャベツとか」
「ちゃんと肉だって食べます!野菜好きですけど僕の好物は焼き鳥なんですからね!」
「その割にはひょろいよねえ」
からかう口調で楽しそうに玉ねぎの皮を剥きながら臨也さんの口は本当によく回る。
「う、うるさいです!」
彼はクスクスと笑いながら包丁で玉ねぎを切り始めたので泣かないのかな、って
じっと見てたら涙なんて零れもしない。そんな視線に気が付いたのか臨也さんの
視線がちらりとこちらを向いたがすぐにまた手元に戻ってしまった。
「ほら、いい加減さっさと座る。足に負担かかるでしょ」
「あ、は、はい…」
「あれ、帝人君泣いてるの?玉ねぎで」
こっちがボロリと涙を一粒零してしまったじゃないか。
「…なんで泣かないんですか臨也さん」
「さあ、なんでだろうねえ?ほーら、いい加減にす、わ、る」
「わ、わかりました」
「泣いた顔もやっぱり可愛いね」って臨也さんは言うものだから僕は自分の涙を
指で拭うと逃げるようにパソコンの前に座ってテレビを見始めた。けれど臨也さんが
気になって全然頭に入ってこない。狭い部屋で臨也さんが僕のために夕飯を作っている
というなんとも奇妙な空間だ。心配して様子を見に来てくれたのかな、そうだったら
すごく嬉しい。

それにしても毎度の事ながら臨也さんの情報網には感心する。
だって僕が怪我をしたのはほんの数時間前の事なのに。
来良学園に息のかかった生徒とか先生とか
いるんじゃないのかな。…この人ならありえる…。
─……そういえば臨也さんが僕のアパートに上がり込んだのって初めてじゃない?
二人で会う時はいつも外だった。ばったり学校の帰り道で会ったり
約束をした後は外で待ち合わせをしていたし。
「…そういえばあの矢霧製薬の一件の時以来じゃないですか?臨也さんがうちに来るの」
「ああそうだったかな」
「変ですよね、いままで結構長い時間一緒にいたのに」
沈黙が降りてテレビからCMの音だけが流れている。
「自信ないもん」
それはぽつりと囁かれた。一瞬聞き逃してしまいそうな小さな声で。
僕は臨也さんの背中を見た。
「何がですか?」
「……俺の口から言わせるの」
はあ、と小さな溜め息が一つ落ちた。
「な、なんですか」
彼は僕に背を向けたままだ。
「好きな子と好きな子の部屋で二人っきりで何もしない自信ない」
この人は簡単に僕の心臓の音を跳ねさせる。
「…!!」
なんで、そんな事を言うんだ…!!この男は!