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やがて、堕ちて溶けて混ざり合う

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その瞳が欲しい、と男は言った。少年は無表情に嫌ですよと返すと、蒼い瞳をゆっくりと伏せる。

男は少年の瞳が好きだった。

何処までも蒼い、綺麗な色をしたそれは、無邪気に細められたかと思うと途端に鋭い光を放ち、男を見据える。その時のぞくぞくと背中を這い上がってくる何とも言えない快感が堪らない。だから男は少年の瞳が欲しくて欲しくて堪らないのだ。

その瞳を、少年を、全てを支配してしまいたいとも思うし、同時に支配されたいとも思う。どうしようもない支配欲がうずうずと腹の内で暴れていて、今はそれを抑えるのに必死だ。なけなしの理性を総動員しても尚、欲はむくむくと膨れ上がり、解放されるその時を今か今かと舌を出して待っている。要は極限状態で、お預けをくらっているのだ。

男はあくまでも少年のボディーガードという名の飼い犬。主人に噛み付く等、到底許される行為ではない。それに少年は時に酷く冷酷で残忍な生き物であった為、一度でも噛み付こうものなら容赦無く切り捨てられ、男はもう少年の側には居られないだろう。――男は、ただそれだけを恐れていた。

「僕の瞳が欲しい、だなんて、とんだ変態ですね」

少年――帝人は、揶揄ようにそう言い軽く鼻で笑うと、足元で跪いている男――静雄の金色に染められた頭部をひ弱そうな白い小さな手の平で下を向くよう押さえ付ける。

「貴方は黙って僕を護っていて下さればそれでいいんですよ」

飼い犬の癖に、余計な事を考えないで下さい。
鋭い声音でそう言うと、帝人は手を離し、静雄の腹部にローファーの爪先で蹴りを入れる。身体が有り得ない程頑丈な静雄にしてみればその程度の蹴りは言葉通り痛くも痒くもないはずなのだが、静雄は簡単に床に転ぶと、ゲホゲホと数回咳を零し、蹴りを入れられた部分を右手で押さえる。

「ふーん。流石の貴方でもやっぱり毒は駄目なんですね」

帝人はうずくまり何事かと腹部を押さえながら思案している静雄を見下ろしながら小さく独り言のように呟く。すると突然ローファーを脱いで静雄の目の前まで持って来ると、にっこりと無邪気な笑顔を浮かべた。

「新羅さんお手製、どんな硬いものにも絶対刺さる針と、これまた新羅さんオススメの蛇毒です。これを特製ローファーの爪先に付ける、という作業は臨也さんがやってくれました」

帝人は酷く楽しげにそう告げると、どうです?効いてるでしょう?とこれまた愉快そうに笑って、静雄の髪を優しく梳く。

「無様ですねえ。最強の名が廃れますよ、静雄さん」

ハァハァと荒い呼吸を繰り返す静雄の苦しそうに歪んだ顔を覗き見ると、帝人は至極満悦そうに口端を吊り上げ、笑う。

「嗚呼、でもその方が飼い犬の貴方に良く似合ってます。素敵。とっても綺麗です」

恍惚と蒼い瞳を揺らして、帝人は、もがき苦しむ静雄の頬にするりと優しく手を滑らせ、ゆっくりと、輪郭をなぞるように、慈しむように撫でる。


支配者はひとりで十分でしょう?

(蒼に映る金に、男は小さく笑った)