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DFF210:虚勢

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「おーい、フリオーっ!」
少し離れたところでティーダがぶんぶんと手を振っている。
背伸びまでして両手をめいっぱい振っている姿は子供っぽくて、隣を歩いているスコールと同い年とは思えない。
そんなことを思いながらちらりとスコールを見ると、彼はフリオニールの視線にすぐ気がついたらしく、視線を向けてきた。
「……なんだ」
「いや、何でもない」
慌てて否定して視線を逸らす。
「はやく来いよ――! 見せたいものがあるッスよー!」
しきりと手を振ってこちらを呼ぶティーダの声の大きさに閉口したのか、スコールが「……賑やかだな」と呟きを漏らす。
「そうだな」
それに同意をするとスコールは大きくため息をついた。
「……バッツよりはマシだが」
――そこで彼の名を出すか。
「………」
さすがにそれに同意をするのは気が引けて言葉を濁す。
返事や同意がほしかった訳ではないらしく、スコールはそれ以上何も言わず歩いていってくれたので、フリオニールもそれにならって歩いていく。
「は、や、く――!」
一体何を見せたいのかティーダはしきりとフリオニールを呼んでいる。
その勢いに苦笑を浮かべるを得ないフリオニールだった。




「……でさ、イミテーションがこんなのを持ってたわけよ。珍しいだろ? リーダーに言ったら「見つけたのは君だから好きに使ってくれて構わない」って許可くれたッス」
どうやら見せたかったのは先ほど倒したイミテーションが持っていた装備らしい。
「フリオ、使う?」
「いや……ティーダが見つけたんだし、俺はこの前拾った剣があるから……」
「じゃ、オレ使っていい?」
頷いて見せると、ティーダはぱあっと顔をほころばせた。
「サンキュー! よーし、次の戦闘で使ってみるッス!」
「あ、さっきの剣結局ティーダのものになったのか」
声を聞きつけてかバッツが近づいてくる。
「オレのものになったッスよ」
「なぁなぁ、一回貸して?」
「ええええ~~? バッツは何でも武器使えるんだから剣にこだわることないだろ?」
「いいだろ? 一回だけ!」
「えええ」
フリオニールはそんなやりとりを始めた二人から離れ、様子を見守ることにした。
(――確かに、ちょっと賑やかかも……な)
二人して話していると本当に賑やかで、今が消失の危機を感じながら戦っている最中だという感じがしない。
「……小休止の時くらい静かにしたらどうだ……」
というスコールの意見はすぐに却下されてしまい、二人はまた賑やかに今手に入れた剣についてあれこれと話をしている。
後の仲間はそれを苦笑を浮かべて見ているものの止めようとはしない――いつものことなのであきらめている部分もあるのだろうが。
(夜はぐっすり眠れるだろうな……)
そんなことを思いながらフリオニールは彼らを見つめていた。








そして夜。
各自が自分の天幕に引っ込み、静けさが辺りを支配する頃。
フリオニールとティーダも同じ天幕で休む準備に取りかかっていた。
「じゃ、オレは寝るッスよ」
早々に寝床の準備を終わらせたティーダは、フリオニールがまだ髪をほどかないうちにさっさと寝床へと入ってしまった。
「早いな……」
「フリオニールが遅いだけッスよ。お休み」
それだけ言って頭まで毛布をひっかぶったティーダは、すぐに寝入ってしまったのかそのまま動かなくなった。
寝付きの良さに感心しながら、フリオニールはようやく身につけた装飾品を取り外し、寝る準備を整えることが出来た。
ティーダは完全に夢の中なのか微動だにせずに横になっている。
(…………?)
――眠っているならもうちょっと寝返りをうつなり何なりの動きがあっても良いものだが。
そう思いながら、そっとティーダを上から覗き込む。
「……ティーダ」
ゆっくりと彼の髪を撫でる――その途端、ティーダの体がびくりと震えた。
「やっぱり、無理してたんだな」
微かに彼の体が震えているのに気がつかないふりをして髪を撫で続ける。
「……無理、なんか……」
崩壊していく世界。
光を失っていくクリスタル。
何度も起こる消失の危機。
――闇しか見えない今、いつも通り振る舞うことで何とか皆の気持ちを落ち込ませないようにしている――だがそれにも限度はある。
ティーダにも消失の危機は何度も起こっているし、不安はある。
フリオニールも同様だった。
「今は誰も見ていないから、無理をする必要はない」
――今くらいは、不安に怯えて涙が止まらないのを隠すことはない。
皆、同じだから。
「……い、まだけ……」
かすれたティーダの声が聞こえて来た。
「……今だけ、傍に……いて、くれ……」
彼の髪を撫でる手を止め、背に回す。
そのまま抱き寄せるとティーダは素直にフリオニールに身を寄せて来た。
「今だけじゃない……ずっと傍にいる」
「……っ」
「だから、辛いのに無理に笑おうとしなくてもいい」
フリオニールはティーダを抱き寄せる腕に力を込めた。
「……う……ぅう……っ」
耐えられなくなったのかしゃくり上げる彼の背を宥めるようにゆっくりと撫でる。


いつでも明るくて皆を励まし続けるティーダに、皆甘えていたのかもしれない。
ティーダもそれが分かっているから、ずっと明るく振る舞っていた――いつも。
誰もいないところで苦しみを一人抱えて―――



くたり、とティーダの体が弛緩したのに気がつき、フリオニールは彼の顔を覗き込んだ。
頬に涙の跡を残したまま、ティーダは眠りに落ちていた。
「…………」
彼の体を寝床に横たえようとして、ティーダの手が自分の服を掴んでいる事に気がつく。
優しく離させようとするがきつく掴んでいてとても離れそうにない。
仕方なくフリオニールはそのままティーダの横に身を横たえた。
「……お休み、ティーダ……」
フリオニールの声は眠る彼には届かない。
だがぬくもりは確かに彼に伝わっている。
服越しに感じるティーダの体温を感じながら、フリオニールは目を閉じた。




END

作品名:DFF210:虚勢 作家名:八神涼