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一日一ミハエルチャレンジ

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2/14 アイゼンヴォルフ






「少し早いですけど、お祝い、しましょうか」

エーリッヒの提案に従って、明日に誕生日を控えたミハエルは夕刻、出かけることになった。
お伴は4人、もちろんチームの一軍メンバー全員だ。
今日は冷え込むらしいですから、というエーリッヒの進言に従って、ミハエルの首にはぐるぐると毛糸のマフラーが巻きつけられている。
さらに、その上にはもこもことした真っ白のイヤーマフ。
エーリッヒがどうぞと差し出してきて、確かに温かそうだったから素直に受け取った。
耳に当てると多少音の聞こえは悪くなるが、ふわふわの繊維が耳朶にあたって気持ちがいい。

「寒くないですか?」

「うん。全然」

元々がドイツで生まれ育ったミハエルだ。
冬の厳しさは東京とは比べるべくもない。
これだけの装備をしていれば、相当体調を悪くしてでもいなければよほど大丈夫だろう。

「防寒対策、ばっちりですね」

これで仕上げと言わんばかりに手袋を差し出して、エーリッヒが微笑んだ。
かくいうエーリッヒも、それから残りのみんなも、ミハエルと同じようにしっかりと着込んで首元にはそれぞれをマフラーを巻いている。
さすがに、耳当てまではしていないが。
ちょっと外に出かけるだけにしては、大した装備だと思うのだが。

「………アドルフ、寒いの?」

「いえ、平気です」

意外に寒さに弱いのか、ストライプのマフラーを巻いたアドルフは、ミハエル以上にぐるぐる巻きで口元まで毛糸に埋めている。
心なしか首を竦めたような姿勢が言葉とは裏腹に真実を語っていて、ヘスラーが後ろで苦笑している。

「貸してあげようか、あったかいよ、これ」

自分の頭のイヤーマフを指差すと、一瞬ののち、盛大な遠慮が返ってきた。

「いえ! 結構です!」

もこもこのイヤーマフを装着したアドルフを想像したのか、シュミットがミハエルの隣で小さく吹き出した。
じとりとした目を向けるアドルフをまあまあとエーリッヒが宥めて、それから

「行きましょうか」

微笑みを合図に5人はそろって宿舎を後にした。





「ここ、遊園地?」

休日もそろそろ残り時間を少なくした時間帯、昼間はそれは賑わっていたのだろうと思わせるのだが、いかんせんこの時間だ。
正面のゲートから帰路に着くらしい人影がほとんどで、閉園もせまっているだろうに、これから中に入ろうという人間は見当たらない。
こんなところに来てどうしようというのだろう。
先頭に立っているシュミットを見上げるが、シュミットは、行きましょう、とすたすたと門に向かって歩き出した。

「え?」

だってそろそろ閉まっちゃうんじゃないの、と尋ねようとしたのだが、

「ミハエル、行きましょう」

ヘスラーの大きな手がそっと背中に添えられて、促されるままにミハエルもまた歩き出す。
人の流れに逆らって中へと入ると、人気の少ないそこは、がらんとして少しだけ寂しい。
目の前のメリーゴーランドは誰も乗っていないのにきらきらとライトが付いていて、そこだけが賑やかだ。
きょろきょろと辺りを見回すと、大きな規模ではないが、その他一通りの遊園地の装備は完備しているようだ。
小さいながらもジェットコースターもある。
あ、あれ乗りたいなあ、考えたところに、

「今日は何でも乗り放題ですよ」

もちろんジェットコースターも、とエーリッヒが片目を瞑った。
その手の乗り物をミハエルが大好きなのだと知っているからなのだろうが。

「ええ? なんで?」

どう見てももうすぐ閉園、それなのに乗り放題というのはいったい。
疑問の答えはシュミットが引き取った。

「今日はこれから貸し切りです」

いったいそれはなんなのだろう、と首をかしげると、今度はヘスラーが後を続ける。

「もうすぐ、ミハエルの誕生日ですから」

みんなで奮発したんです。
4人がミハエルに向き直り、笑った。

乗り放題だと言われたならば、好きなだけ乗らなければかえって失礼だ。
偉そうにシュミットが言うので、ミハエルは目についた乗り物すべてに乗ることにした。
何せお伴は4人。
どれだけ乗っても誰かが必ず付き合ってくれる。
ひと通り乗ってしまって、さてまだ乗っていないのはと頭を巡らせたところで目に入ったのがメリーゴーランドだったときは、さすがに4人全員が目を逸らしたが。
結局、メリーゴーランドには全員一緒に平等に乗って、他のは何回でも付き合いますからこれだけはもう勘弁してくださいと4人の視線がそれぞれ訴えるので、大好きなジェットコースターに繰り返し乗ることにした。
そんな風にして、思う存分遊んだ後。

「面白かった!」

思い切り伸びをすると、すっかり暗くなり切った空にはたくさんの星が浮かんでいる。
いったい今は何時なのだろうか。
随分遊びまわっていたので、もしかしたら相当な時間なのかもしれない。

「ちょっと休憩しましょうか?」

「うん」

さすがに売店は閉まっているので、自販機で買ったホットミルクティのカップを手渡される。
ふうと息を吹きかけると、白い湯気がふわりと揺れて鼻先にかかった。

「あったかい」

「体、
冷えてしまいましたか?」

「ううん、それは大丈夫だけど。…帰ったら、エーリッヒの紅茶が飲みたいなあ」

「分かりました、帰ったらとっておきのを入れますね」

「うん、お願い」

ではそろそろ帰るのだろうかと、ミルクティを飲みながら頭の片隅で考えるのだが、自分の隣に座ったエーリッヒにシュミットが目配せを寄こした。
エーリッヒが腕時計を見てから残る二人を見回して、4人が顔を見合わせてうんと頷く。
……なんだろう?

「ミハエル、帰る前にあとひとつだけ」

「うん?」

にこりとみんなが笑って、

「行きましょう」





4人に連れられて辿りついたのは、ぐるりと空に大きな円を描く乗り物。

「観覧車、」

「はい」

「乗るの?」

「はい、全員で」

そういえばほとんどすべてに乗ったのに、これだけはまだだった。
多少広めには作られているが、5人も詰め込めばさすがに狭い。
けれど、

「わあ…!」

寝静まった街に、街灯や家の灯が散りばめられていて、見事な夜景が目の前に広がっている。
多少の手狭さなんてもう気にならなくなってしまう。

「きれいだなあ!」

窓に手をついてきらきらした宝石のよう光の粒に目を奪われていると、こほん、とシュミットがひとつ咳をした。

「あー、ミハエル」

「?」

4人がまた目配せをして、同じタイミングで息を吸った。

「Alles Gute zum Geburtstag!」

これが僕たちからのプレゼントですよ、と、笑うエーリッヒが指し示したのはミハエルが見惚れた夜景。
どうやらたったいま、日付変更線を越えたところらしい。

「僕たちのリーダーでいてれくて、ありがとうございます」

「これからもよろしくお願いします」

「全力でリーダーを支えますから」

口々に祝いの言葉を寄せられて、ほかりと心が温かくなる。
毎年それは盛大に祝われてきたものだが、こんなプレゼントは初めてだ。

「うん、ありがとう、みんな!」