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空から落ちる、偶然な幸せ

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空から人が降ってくるなんて、漫画や小説の中だけだと思っていた。
しかし実際に両腕で支えている相手は空とは言えなくとも上から落ちてきたし、現実に起こった出来事だ。
どこかで見たことのあるようなシチュエーションだな、と心の中で呟いてヨウスケは腕の中に目を落とす。
大事に抱えた腕の中で俯いて小さくなっているのは第六戦闘ユニットの教官、アキラである。

「ご、ごめんなさいヨウスケくん…」

おずおずと上目でヨウスケを見るアキラは、羞恥で顔を真っ赤に染め上げていた。
若干潤んだ目にくらりと来る。
抱きかかえているせいで密着した身体は柔らかく暖かく、ヨウスケはそこでようやく現状の密着具合に気がついた。

「いや…ちゃんと受け止められたから気にしなくていい。でも次からは気をつけてくれると助かる。心臓に、悪いから」
「うん……ごめんなさい」

そっとアキラを下ろすと、ヨウスケは赤くなったであろう目尻を誤魔化すように掌で擦った。
突然の降って湧いたような災難だったとはいえ、アキラを守れたのだからヨウスケにとっては上々な結果だ。
寧ろ自分がいないときにアキラが落ちなくてよかったと思う。
空ではなく階段からとはいえ、落ちれば怪我の一つや二つでは済まなかっただろう。

それにしてもと頭を巡らせ、ヨウスケはアキラが足を滑らせた場所に目を向けた。
ころりと転がっている白いボールと、板。
足を乗せれば間違いなく転ぶようにセッティングされていたようだ。
ボールの持ち主はカズキのサブスタンス、リッケンバッカーのものだが、リッケンバッカーがこのような悪戯を仕掛けるとは考えにくい。
となれば、悪戯好きのレスポールあたりが犯人だろう。

「仕方のないやつだな、レスも」

ぽつりと呟くと、アキラがはっとした顔をして首を振った。

「違うわヨウスケくん。これは私が勝手に転んだの!」
「……それを信じろっていうのか?」
「そうよ。信じて欲しいの。…ううん、違うわね。そう思って欲しいの」
「……チッ」

先程のおどおどとした態度はどこかへ霧散し、あっという間にきりりとした指揮官の顔をする。
ヨウスケにとってアキラの言葉は絶大な威力を持つものであったし、その中から読み取れるアキラの心情も理解出来るものだった。
ヨウスケさえ黙っておけばサブスタンスにも、引いてはメインスタンスである自分たちにもお咎めが来ることはない。
アキラの配慮に奥歯を噛むと、ヨウスケはアキラの言葉を受け入れた。

「でも、レスには一言言わせてもらう。それでいいだろ?」
「…!うん、勿論よ。でもあまりきついことは言わないであげてね?」
「それは約束出来ない。あんたを危険な目に遭わせたんだから」
「でもヨウスケくんが助けてくれたよ?」

にこりと笑われ、ヨウスケはぐっと言葉を詰まらせる。
アキラの言葉は結果論だ。
たまたま通りかかったときにアキラが足を滑らせた、偶然が幸運を呼んだだけだ。
それでもヨウスケがいるから大丈夫だと、何の確証もないのに口にする。
その気持ちに心がぐらりと大きく揺れた。
揺れて、揺さぶられて、アキラでいっぱいになる。

「…あんた、反則すぎる」

惹きつけるだけ惹きつけておいて、アキラにはきっと他意はないのだ。
分かっていても心を持っていかれる。
悔しい気持ちと、それでもいいと思う気持ちが混ざり合い身体が勝手に動いた。
ぎゅ、と抱きしめた小さな身体は思っていたよりもずっと華奢で腕の中にすっぽりと収まってしまう。

「ヨ、ヨウスケくん…っ!?」
「また危険な目に遭ったら必ず俺を呼べ。絶対に駆けつけてあんたのこと守るから」
「…うん。ヨウスケくん助けて、って叫ぶよ」
「それでいい。でも本当はずっと俺の目の届くところにいて欲しいんだ。あんたはそそっかしいから、すぐ怪我しそうだしな」
「そんなにそそっかしくはないと思うけど…」

でも、有難う。
軽やかな声がヨウスケの鼓膜を打つ。
言葉の意味を分かっていないらしいアキラに、それもまた彼女らしいと苦笑したヨウスケは、偶然を装ってアキラの耳朶にくちびるを掠めさせた。
身体を離すと真っ赤になったアキラの顔が視界に入る。
もっと意識して欲しい、出来れば男として認識してくれるといい。
難攻不落の教官を前に、ヨウスケは滅多に見せない満面の笑みを浮かべて見せた。