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奏でる世界

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鼻歌が聞こえる。臨也さんが出掛けてる今、部屋にいるのはサイケと帝人、二人だけだ。
機嫌良さ気に口ずさむサイケの姿が微笑ましくて、くすりと笑みを零した帝人に気付いたのか、不思議そうに振り返ると「なーに?」と彼は無邪気な笑顔を見せた。
「いや…楽しそうだな、って思って」
「うん!音がいっぱいで楽しいよ!」
「音?」
「今日は台風でしょ?だから、窓の外から聞こえる音がいつもよりたくさんあるんだ!」
「へぇ…」
サイケは耳がいい。音を奏でる機能以上に、音を収集・編集する作業に秀でているサイケは至る所で音を集めては、その音を用いたり、それによって得たイメージを形にして曲を作る。
「風がビュービュー吹きつけたり、雨が窓に強くあたったり、普通の雨の日よりもたくさん音が聞こえる。外はいろんな音で溢れてるよ!」
「そうですか…僕にはゴーゴーってうるさくしか聞こえません」
「かもね!でも、うるさい音でもそれは『音』だよ。だからこんな風にもできる!」
そう言って、サイケは手に持っていた端末を操作した。どうやら早速今感じていた音達を曲にしたらしい。

端末から流れるのは、騒がしくもあり、若干うるさいとも感じられる様々な楽器の音色。不協和音を奏でながらも、所々でシンクロし、ハーモニーを奏でる。
聴いているだけでそれまで考えていたことが吹き飛びそうな勢いのある音は、まさに台風そのもの。
台風で感じたサイケの感情が溢れだした、『楽しさ』と『期待感』で満ちた曲だった。
最後には台風が鎮まった後のように、緩やかなテンポで曲は終わった。

流し終わった曲の感想が早く聞きたいと、期待の眼差しを向け帝人を見つめるサイケににっこり微笑みかける。
「素敵な曲ありがとうございます」
「えへっ、帝人君が気にいったなら良かった」
頬を緩ませ喜ぶ姿が可愛くて、サイケの頭を撫でてやれば、一層彼は嬉しそうに表情を崩していく。
(本当、臨也さんと違って素直だな)
本人が聞いたら怒りそうなことを内心思いながら、さらさらとした髪を撫でつづける帝人の顔も、サイケにつられ嬉しそうに微笑んでいた。

「あ、臨也帰ってきた」
「本当ですか?」
「うん!ペットボトルがぶつかる音がした」
実は帝人とのジャンケンに負けて、この雨の中コンビニへの買い出し係になっていた臨也。
飲み物やお菓子を頼んでいたから、ペットボトルはその購入品のひとつだろう。
「じゃあ、サイケはタオルを持って玄関に行ってください。僕はお風呂を沸かします」
「わかった!お風呂一緒に入ろうね!」
「入りませんから」
サイケのさり気ない要望にしっかり返答しつつ、帝人も臨也を出迎える準備をしようと立ちあがる。
ふと、サイケが置きっぱなしにしていった端末が目に移る。
サイケのヘッドフォンと同じく、ピンク色をしたそれの中にはどれだけの音が、サイケが感じたものたちが入っているのだろう。
(今度改めて曲を聴かせてもらおうかな)
きっと彼は弾けんばかりの笑顔で自分に曲を披露するんだろう。容易に想像できる姿に笑いが零れた。


【奏でる世界】




(ただいま…)
(臨也君お帰り!はいタオル)
(それよりも帝人君は…)
(今お風呂入れに行ったよ)
(じゃあ俺はそのまま帝人君と風呂に入ってくる。寒い冷たい寒い)
(あ、俺も行く!)


風呂場で帝人に二人が抱きつくまであと三十秒。


作品名:奏でる世界 作家名:セイカ