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溺れるもの

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いつからだろう・・・君を目で追いかける僕がいた]

「タクトくんは彼が気になるようね」
「え?」
なんの脈絡もなしに、自称人妻高校生のワタナベ・カナコは言った。
聞こえたのは僕だけのようで、クラスの皆は部活や委員会、又は帰宅しようと各々支度をしている。
「なんのこと?」
「あら?気づいてないのかしら?それとも気づかないふりをしているのかしら?」
「・・・・・・」
何か言わなくてはと思ったが、言葉が出なかった。
と、その時。
「タクト君、帰ろう!」
気がつくとワコが僕の横にいた。そして、僕の顔を覗き込んで首を傾げる。
「どうかしたの?」
「あ、いや・・・その・・・」
「?」
「蓋をした思いはいつか溢れ出すものよ?」 
!!
「行こうワコ、スガタが待っている・・!」
「え?タクト君・・・?」
僕はワコの手を引き、スガタのいるところへ向かう。
一刻も早くそこから立ち去りたかった。
「いつ、溢れ出すのかしらね」
「――ッ!」
後ろでワタナベ・カナコがとどめの一言を放つ。握る手に力が入った。
「タクト君?」
「大丈夫だよ」
僕は笑顔で答える。ワコは納得してないのか心配そうに僕を見る。
そして、それはスガタも同じで・・・
「タクト・・・どうかしたのか?」
「な、なんでもないよ!さあ帰ろう!」
「おい、タクト・・・!」「タクト君!?」
僕は二人の背中を押して教室を出た。


「チョコバナナにイチゴにメロンにマロン・・・・・」
「ワコ、いい加減どれにするか決めてくれないか?」
僕たち三人は今、クレープ屋にいる。そして、ワコはメニューと格闘中だ。
「だって、どれも美味しそうなんだもん!」
「さすがに全部はよしてくれよ」
「失礼だな、いくら私でも全部は食べられないよ!」
「へぇー・・・」
「せめて五個ぐらいよッ!」
「それはそれで、どうかと思うけど?」
あの後、二人は特に追求してこなかった。僕としては正直ほっとしている。
そういえば、あの人(ワタナベ・カナコ)はどうして分ったんだろう・・・・。
もしかして、僕ってわかりやすいのか!?周りにバレてるなんて、そんなことないよね!?
一人悶々と考えているとー・・
「ねぇ、タクト君はどれにするの?」
「え?」
急に話を振られ頭が真っ白になる。
「え?え―・・と、・・・その・・」
「僕はチョコバナナにするよ」
『え?』
「僕はチョコバナナにする、タクトはどうする?」
「え?あ、じゃあ・・・・僕も同じので・・・」
「これで、僕とタクトは決まった訳だけど・・・?」
「え?」
「ワコはどうするんだい?早くしないと僕たちだけ先に食べちゃうよ?」
「ちょっと待って、今決めるから!」
ふと、スガタを見ると目を細めやさしく微笑する。ドクンと胸が高鳴り、目を逸らすことができなかった。
いつからだろう?こんな思いをスガタにいだくようになったのは・・・・・

僕がこの思いに気づいたのは、襲われたワコを守るためにスガタがアプリボワゼした時だ。
しかし第1フェーズの能力「王の柱」を使ったことで昏睡状態に陥ってしまったスガタ。
目覚めないスガタに僕は何もできなかった。
ただ、見てるしかなくて。
とても苦しくて、失いたくないって思った。
そして、気がついたんだ。
ああ、好きになるってこうゆうことなのか、って。
だけど、好きだと気づいて失恋した。
だって、どんなに恋焦がれても思いは届かない。
僕の思い人はワコの許婚。
『諦めるんだ』って自分にそう言い聞かせた。
だけどー・・・

 *  *  *  *

「はい、タクト君!チョコバナナ!」
「あ、ありがとうワコ・・・」
(日増しに思いは溢れ、愛しさが増した。)
「美味しいね!」
「え?あ、うん、美味しいね」
(ゴメンね、ワコ・・・。)
「・・・・・・」



「じゃあ、二人ともまた明日!」
「また、明日!」
「ああ・・・」
ワコが家に入るのを見届けると、僕は寮への道へと体の向きを変える。
「じゃあ、スガタもまた明日・・・」
ガシッ
「え?」
突然左腕を掴まれた。
「少し話がある」
「は?え?ちょっと、スガタ?」
(怒ってる?)
僕の腕を掴んだまま、寮とは反対の方へと歩いて行く。
腕を解こうにもビクともしない。スガタって意外と力ある!?って感心してる場合じゃない!!
これってイッツア・ピーンチ!?
「あの――・・・、スガタさん?一体どこへ?」
「・・・・・ついてくればわかる」
いや、そんなんじゃ全然わかりませんって!

そして、着いたのは海岸の砂浜。
もう日が暮れて、あたりはうす暗くなっている。
「タクト・・・」
「は、はい」
スガタは僕の両腕を掴む。
「僕になにか言いたいことがあるんじゃないのか?」
「え?・・言い・・・たい・・・こと?」
「そうだ」
「僕は別に・・・」
「タクト」
声と共にスガタの表情が険しくなる。
「えーと、それよりこの手を離してくんない?」
「ダメだ、話したら逃げるだろ?」
「そ、そんなことないって――・・・スガタ?」
不意に掴まれた手が緩んだと思ったら、
スガタの顔が近付き、そして左肩の肩口に顔をうずめた。
「・・・ッ!」
さらさらな前髪が、僕の頬と首筋を擽(くすぐ)る
「スガタ!?」
「タクト・・・・僕はそんなに頼りないか?」
「え?」
「お前が最近何かに悩んでいるのは知っていた」
「・・・・・・・」
「僕じゃ力になれないか?」
「そんな・・・こと・・・なあっ!」
首筋に鼻が押しつけられる。それだけのことで、身体が弾むほどに震えた。
「ス・・・・ガタ・・・?」
「それとも、僕には教えられないのか?」
「それはー・・」
「タクト」
ぺろりと首筋を舐められる。
「!!」
舌が触れた部分が灼けるように熱い。
「言うんだ」
スガタは僕にそう告げるとキスしそうな距離まで顔を近づけた。
あと1センチで僕の唇に当たる。
「!!?」
思わず瞼を閉じた。
「・・・・・?」
しかし、その1センチの距離で止まったかと思うと
スガタは急に僕から離れた。
「で?言う気になったか?」
「へ?」
「言う気になったかと聞いている」
「は?」
「失敗か、大抵の女子はこれでいちころなんだが・・・・」
まさか・・・・・
「チッ、やっぱり男子じゃ無理か」
「・・・・・・」





「あ、おい!どこに行くんだ、タクト!」
「僕は帰る!」
「まだ僕の話は終わってないぞ!」
「付き合ってられるか!帰る!!」
「何を怒ってるんだ?」
「知らないよッ!自分の胸に聞いてみたら!?」
(最悪!最低!僕のドキドキ返せ!!バカスガタ!)

作品名:溺れるもの 作家名:あぐり