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GUNSLINGER BOYⅩⅠ

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「うん・・もう熱も下がってきてるし、今日明日ぐらい大人しく寝てれば良くなると思うよ」

新羅の言葉に帝人が安心したような表情になる。
無理やり帝人と離された臨也は子供じみた不機嫌顔で「あ、そう」と言った。

「別に、まだまだ治らなくても良かったんだけど」
「なんてこと言うんですか!良くないですよ!」

思わず強めに言ってしまい、帝人はしまったという顔で口元を押さえた。

「す・・すみません」
「・・だから、いちいち謝るなって言ってるだろ」

臨也自身が今まで帝人に対してとってきた態度のせいだとは分かりつつもよそよそしい態度が気に食わない。
元々、可愛い顔してズバズバときついこという子のくせに。


「あの~・・二人とも、ちょっといいかな?」

臨也と帝人のやり取りを苦笑しながら見ていた新羅がころあいを見計らったように話しに割り込んだ。

「帝人君、臨也に話があるからすまないけどちょっとの間席を外しててもらえないかな」
「あ・・はい」
「あ、それのついでに医務室でこのメモを渡して薬を受け取ってきてもらえるかな?」
「わかりました」
「は?ちょっと、」

ベッドの端から立ちあがった帝人は不満げな臨也の方へくるり振り向き、「じゃあ、行ってきますね」と笑顔で言うとパタパタと部屋から出て行った。

後姿を見送った臨也は新羅の方へじとっとした視線を送る。

「そんなあからさまに『いいところだったのに邪魔しやがってこの野郎』みたいな目で見ないでよ。怖いよ」
「分かってるなら何の用だよ。さっさと終わらせてくれる?」
「まったく・・出張の間に何があったやら。ま、いつか折れるだろうとは思ってたけどさ」
「うるさいな。そんなことどうでもいいだろ」
「まさか、あの街で静雄に会ったとか?」
「・・・そんなに刺されたい?」

あきらかに機嫌の悪い臨也にこれ以上詮索をかけても無駄だと悟った新羅は早々に本題に入ることにした。
病床の身とはいえ、本気で怒らせたらまずい。
そうでなくても取扱注意な話題を話さなくてはならないのだから。

「話したいのは帝人君のことだよ」

帝人を部屋から追い出した時点で予想はしていた。
臨也は無言で先を促す。

「義体の記憶と感情は条件付けである程度操作されてる。個体によって条件付けの強弱は異なる。
条件付けを強くすればより担当官の思いのままに動かせるけどその分副作用も強くなって寿命が縮む。逆に条件付けを弱めれば寿命が延びる分、反抗的になったりする。」
「そんな分かり切ったことはどうでもいいよ」
「まぁ、確かにそれはいわゆる義体の常識なんだけど。でも正直義体には僕たち技術部にも分からない部分がまだまだ沢山あってね・・」

新羅は持ってきたファイルを眺めて首を横に振る。

「帝人君は最初から若干普通の義体と違うところがあってね、他の義体よりもずばぬけて好奇心が強かった。見慣れない物好きっていうのかな?
でもそれは別に義体としての性能に支障がでるわけでもないし性格修正の必要は無いって判断された」

臨也は初めて帝人と会った時のことを思い出した。
義体のくせに貪欲な知識欲に濡れた青い瞳。こちらを観察するような眼差し。まるで、自分の同類のような・・。
臨也はそれを一目で気に入った。
彼を傍に置いて観察したいと思った。

「でもその後、君と組んでから段々・・他の義体には現れないような思考パターンが見え始めてね。しまいにはそれについてこちらが詮索しようとすると拒絶反応がでるようになった。
で、仕方ないから技術部も色々と質問パターンや方法を変えて拒絶反応がでないようにアプローチしたんだけど・・・

どうやら、帝人君は義体なのに君に真っ当に恋してるらしい」
「は・・?」

軽く言った新羅に、臨也は思考が追い付かず首をかしげる。
まっとう?

「どういうこと・・?」
「僕は前からうすうすそうなんじゃないかと思ってたけど。案外疎いよね、臨也」
「っだからどういうことだよ」
「義体は皆、条件付けのせいで担当官に疑似的な恋をしてるような状態になってる。でもそれはあくまで疑似的なものだから、担当官が公社を裏切ろうとかすれば公社のために担当官を始末したりする。忠誠度では公社>担当官って具合。
でも帝人君の中ではそれが逆転しちゃってるらしくて、公社よりも何よりも君のことを大事に思ってる。
条件付けのせいじゃなく、彼自身の『意思』でね」
「帝人くんの・・意思で・・・?」

帝人くんが俺を・・条件付けじゃなく愛してる・・?

「多分、君が条件付けをしなさ過ぎたせいもあるだろうけど、そういう場合は今までなら銃や人殺しを怖がったりしだして使い物にならなくなるから必然的に条件付けを強めざる負えなかったんだけど・・帝人君、任務には何の支障もきたしてないし。かなりイレギュラーなパターンだよ。
・・それについて、君たちが出張に出てる間に会議があったんだ。
当然、『公社よりも担当官を大事に思ってるなんて危険な状態だ、強制的に再洗脳すべきだ』って意見も出てね・・・」
「そんなことさせるわけないだろ。ふざけんな」

キレ気味の臨也を「い、いや、最後まで聞いてよ」と、なんとかなだめる。
気をつけないとナイフで刺されかねない。

「で、そういう意見も出たんだけど、今のところ目立った問題も見られないし、担当官の折原臨也は『真面目な好青年』で親は公社の幹部で裏切るわけ無い。折角珍しい義体の例を観察するチャンスなんだしこのままにしておこうってことになりました~・・ぐえっ」
「最初に言えよ、それ」
「い・・臨也、ほんと君って帝人くんがからむと静雄みたいな気の短さだよね」
「あんな単細胞と一緒にしないでよ・・ああ・・公社の他の奴らの前では猫被ってて良かった・・」
「何せ真面目な好青年サマらしいからねぇ・・・ほんと、周囲をだまくらかすのにかけては天才だよ」

そんな新羅の皮肉はもはや臨也の耳には入っていない。

ずっと、こちらの一方通行で終わると思っていた。
それでも受け入れようとしていたところなのに・・・

「でも何かしら問題行動とかがあったらまた審議しなおしだから気をつけてね」
「はいはい。分かってるよ」

口ではそう言いながら、出張先でのあの出来事は絶対口にするまいと思う。
帝人にも口止めしておかなくては。
担当官の声を無視して逃げ出したあげく、『フラテッロ解消を持ちかけられた瞬間あなたを殺そうと思った』と告白されたなんて、何があってもばらすわけにはいかない。

「で、新羅、話しはそれで終わり?」
「そうだね」
「じゃ、帝人くんを呼んでお前はさっさといなくなってくれる?」


新羅は苦笑しながらドアに向かい、部屋の話し声が完全に聞こえないぐらい遠くで座りこんでいた帝人に声をかける。

呼ばれた帝人が臨也のもとへ戻ってくるまで、そのわずかな間すら今の臨也にはとても長く感じられた。



はやく君を抱きしめたい
作品名:GUNSLINGER BOYⅩⅠ 作家名:net