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星に願う side スガタ

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ワコが海岸で見つけたその男は
いつもあっけらかんとしていて
自分の持っていないものを
持ち合わせている男だった。

緋色の髪と瞳。
いつも屈託なく笑って、
あっという間に学園中の人気者になり、
―――ファンクラブまで出来たことは、
タクトはまだ知らないのだろうが―――
天性のものがあるのだと思う。

そのタクトに惹かれることに
なんの疑問も抱かなかった。
あれほど、無垢に真っ直ぐな人間を
スガタは
知らない。

欲しい、と
真っ先に思った。

少なくとも
学園生活を送る上では
「対等な友」、
だと思っていた。そのように演じていたはずだ。
それなのに。

「スガタってカッコイイよな!」
―――憧れだ!

そう言ったタクトの一言に、
思いもよらず、衝撃を受けた。
憧れる?
こんなにも毎日一緒に過ごす時間があって尚、
自分に憧れると?
それは少なからず、
一線置かれている証拠ではないのか?

言ってしまおうか。
自分の、タクトへ対する想いが
どんなものか?

お前の言う憧れとは、
ただの幻でしかないと。

「自分を殺して生きることの、
何が『カッコイイ』なんだ?」

言ってから、
少なからず、しまったと思った。
無意識に、心の闇を吐き出していたことに
自分でもぎょっとした。

こんなに乱されるのは
相手が
タクトだから。

らしくない。
そう思い、放課後は一人道場に篭もった。
心がざわつく。
落ち着くために
かれこれ2時間、
素振りをしていたが。
結局身が入らずに、海岸へ出かけた。

外はすっかり日が暮れていて
海に星空が反射して、
ずっと見ていると境界がわからなくなる。
その光景に一瞬、足が竦んだ。
星が流れて、天地がはっきりしたとき
自分は地に足をつけて、
ここにいる、と気付かされた。

ふいに見上げた、満点の星空。
また一つ、使命を終え零れた落ちた星に
ひっそりと、願う。


友人という枠を壊して
彼を手に入れることを
どうか咎めないで欲しい。


ワコを守る事
島の秘密を守る事
シルシを、持つ者の使命。

全ては義務で
当たり前でしかなかった。

当たり前だから
それ以上でもそれ以下でもなかった。

けれど、
タクトに関しては違う。

自らが望む唯一無二。
それは誰にも渡せないもの。
それ程に大切なもの。


そう遠くないところで、
突然ジャリ、と砂を踏む音が聞こえた。
そちらを見やると
自分の心を乱す、
緋色に包まれたタクト本人。

これには少し、
驚いた。


星か
月か
神・・・・は甚だ信じていないが
いつもと何ら変わらない毎日に、
たまに面白いことをしてくれるようだ。


妙に慌てたタクトが
門限だからと言いながらも
言葉を交わしてくれた。
月明かりでもはっきりわかる程の
頬の紅潮。
なぜか、泳ぐ視線。

そして慌ただしく
去っていく。

その姿を見送りながら
どこかで確信する。

タクトを
捕らえるのは
難しいことではなさそうで、
そして
遠くない、未来だと。


「・・・・・」
ちょっと笑って、
タクトが残して行った砂の上の足跡を見る。
それすらも、愛おしいと思うのは
もはや、独占欲。

つまらない人生を送るだけ
と思っていたけれど。
タクトに感謝しよう。
そう。
この星空のように、
普遍的に失いたくないものを見つけたことに。