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仮面遊戯

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地下の薄暗いバーには、ジュークボックスからのジャズピアノの音が絶えることなく流れている。
他のバニシングエージのメンバーがこのバーに揃うのを、
リョウ・ギンタ――つまり、俺とメンバーかつ同級生のツキヒコと他愛のない会話を繰り返して待っていた。
話すうちにある人の存在が俺の脳裏を掠めて、座っていたソファから少し身体を起こして隣に座っているツキヒコに尋ねた。
「そういえば、空き缶に感謝しつつ捨てるんじゃなかったっけ?」
「もう、あの人は空き缶じゃないじゃん。」
ツキヒコの言う『あの人』とは、綺羅星十字団第2隊バニシングエージ代表ヘッドのことだ。
仮面を被っていて紫色の髪と口元、そして声しか思い出せなかったが、それだけで十分だ。
ヘッドという男は悪魔みたいな男だ。
綺羅星十字団を一時的にまとめているだけあって、賢い。
団員の多い綺羅星十字団を恐ろしいぐらいの統率力で彼は的確に指揮していく。
俺にとっては、得体の知れない男でしかない。
「詰めが甘いなぁ、お前は…。」
「っ…。」
スティックスターのツキヒコは先日弱気で休業中なヘッドはもうお払い箱といったことを宣言し、
かなり自信を持って挑んだタウバーンに負けた。
電気棺を降りた先でリョウスケさんにまで相当見事な嫌味を言われ、自信の分だけさすがに傷心しているようだった。
表面上の言葉が幾ら強がったとしても、だ。
「お前はそーいうとこが可愛いんだけど、ヘッドへの反応だけは俺妬きたくなるな…。」
ソファの隣に無防備に座っていたツキヒコの方へと寄りかかり、追いつめてにやりと笑ってやる。
ツキヒコはヘッドのカリスマ性に半ば呑まれていて、ヒーローを見るような目と多少色を持った目で彼を見ていると思う。
許せないわけじゃない。
彼とは恋人関係も結んでいるけれど、こだわるつもりはない。
けれど、ツキヒコの目がヘッドを捕らえる時、彼は分かっていなくとも俺には分かる。
「…っ、ギン…っ。」
「仮面のときはキャメルスターって呼ぶ約束だよな、スティックスター?」
「っ、」
気づけば噛みつくようにツキヒコの唇を塞いでいて、角度をじりじりと変えながら彼の唇を貪る。
息継ぎにツキヒコが少し口を開いたところで舌を差し入れ、呼吸のタイミングを奪い、口内を蹂躙し尽くす。
ツキヒコに肩を押され、名残惜しげに唇を啄ばみながら離れてやると彼は必死に呼吸を整えようと肩を上下させる。
「は、っ…。」
「お前はほんと昔から可愛い奴だよ、スティックスター。」
「…、」
「仮面をつけても、俺にとってはお前でしかない。」
だから分かるんだ、仮面を付けなくても俺には。 彼すら知らない彼を俺が。
相手のペースに呑まれているのが気に入らなかったのか、
ツキヒコは余裕を込めていやらしく自分のペースを取り戻すように話し始める。
「そういうお前は、仮面をつけるといつも以上に…。」
そう言った後、ツキヒコは言いづらそうに視線をそむけ、俺の下の身体を身じろぎさせる。
ぐっと彼の顔と距離を詰め、俺は更に追求してやる。
「以上に?」
逃げないように手首を掴み、視線に自分の姿を入れるようにツキヒコの視線を追いかける。
「ん、ん…離せ…。」
「いつも以上に、何だ?」
もう一度聞いてやる。 これでツキヒコのペースは俺の手中に収まったも同然だ。
少し躊躇う様にして、ツキヒコは俺に言い放つ。
「意地悪、だ…っ。」
追いつめられ、余裕を失い大して考えてなかったのか、ツキヒコからは可愛らしい答えが返ってきた。
「意地悪、か。」
くすくす、と笑ってやり、何考えてんだよという顔をする彼の上から身体を起こし、立ちあがって戸の向こうの気配を探る。
「さて、タケオが来る頃かな?」
かつかつ、とブーツが床を叩く音が部屋に近づいてくる頃だろうと判断し、
ソファに体勢を立て直しているツキヒコを背にして、部屋に入ってくるであろう人物を迎えようと立っていた。
胸の奥では湾曲した欲求が彼に触れて、さらに醜く歪んで軋んだ悲鳴をあげる。
「ギンタ。」
「だから、」
仮面の下の俺を呼ぶ声と共に、目の前にツキヒコの薄藍の長い髪が揺れて、俺の肩に腕が回される。
ツキヒコが首を傾げて、こちらの無防備な唇に自らの唇を重ねる。
「…っ。」
その唇を離せばツキヒコは勝ち誇ったように口元を上げて、にやりと笑う。
俺は彼がひらりと身を翻して、バーの椅子の方に歩いていく姿を見つめていた。
もう胸の奥で歪んでいた欲求は大人しくなって、先ほどまでとは打って変わって静まりかえっている。
「なぁ。」
「何だ。」
「俺が意地悪なのはさ…、意地悪したい奴が近くにいるから…じゃね?」
馬鹿、とツキヒコの口の形だけで俺に伝えられ、同時にバーの扉が開いた。



作品名:仮面遊戯 作家名:朱鳥