BLEACH NL中心詰め合わせ。
頑張る少年 / イチルキ・2003.7.6
「もー外してもよいぞ」
擦りガラスの向こうでルキアが言って、一護は目隠しを取った。
そうして、ルキアが入浴を終えるまで、家族に見つからないように浴室の前で見張りをする。もう二週間、成りゆきでこんなことになっているが、考えてみれば(外見だけとはいえ)同じ歳の女の子と同じ部屋に暮らしているというこの状況。同級生の男子達が知ったらさぞや羨ましがるに違いない。
ぼんやりと脱衣所のライトを見つめていると、お湯と石鹸の混じった暖かな匂いが、ドアの隙間から漂ってきた。
頭に浮かんだドアの向こうの映像をかき消そうと、一護は髪の中に手を突っ込んで言葉ににならない声を上げた。
「ど、どうかしたか!?」
「なんでもねぇっ」
「?」
ざぁっ、と体にお湯をかけたらしい音がした時だった。
「お兄ちゃん?どーしたのー、夜中にー」
脱衣所の向こうから、遊子が言った。声を聞き付けて起きてきたのだろうか。見つかってはまずい。一護は咄嗟に浴室の中に逃げ込んだ。
「いっ、一護っ!?」
「しっ、黙ってろ」
少しすると、脱衣所のドアが開いた。
「お兄ちゃん?」
「明日テストだから、シャワー浴びて目ぇ覚まして勉強しよーと思ったんだよ。いいから早く寝ろよ」
「そーなの?でもお兄ちゃんも無理しちゃダメだよ?…あー、コレあたしのなくなったパジャマだっ!なんでここにあるのぉ?」
「あ、洗うの忘れてたんじゃねーの?」
「そぉかなぁ…?」
お休みなさい、と遊子は言ってドアを閉めていった。
遠ざかる足音を聞いて、安心したのもつかの間、
「…一護。上がれんぞ。早く出てくれ」
というルキアの声を聞いて、口から心臓が飛び出しそうになり、慌てて目隠しをした。
「遊子にパジャマ、見つかっちまったからな。同じのは着れないぞ」
「しかし妹たちの服は皆上ではないか。私に裸で寝ろというのか?」
…それは、困る。
一護は目隠しのまま脱衣所の中を探り歩き、自分の物らしいTシャツを掴むとルキアに突き出した。
「取りあえず、これ着てろ」
「うむ」
…しかし、それはそれで失敗だった。
そもそも少し大きめだったTシャツは、ルキアには大分大きめで、『湯上がりにTシャツ一枚』という姿は、思春期の少年のいらん所を刺激するには充分だったのである。
きもち前かがみのまま、一護はルキアと自分の部屋へ戻りながら、このままでは本気で頭が…むしろ体がどうにかなる、と思った。
「では一護、よく休むのだぞ」
何も知らず、ルキアはにこりと笑って押し入れの襖を閉めた。
…休めるわけはなかった。その晩、一護の数えた羊の数は十万を越え、翌朝早々に浦原商店へと駆け込んだのであった。
■END■
作品名:BLEACH NL中心詰め合わせ。 作家名:gen