BLEACH NL中心詰め合わせ。
きっと、ずっと / 恋ルキ←白・2003.9.3
学院西門を出て、一本奥へ入った路地にある茶店。その店の窓際の席に、ルキアが一人で座っていた。うきうきとした気持ちが、頬に浮かんでいる。もうすぐ、待ち合わせの時間になる。恋次が、来る。
三日前。自分の非番と同じ日に、五番隊が非番になると聞いて、ルキアは慌てて恋次に手紙を書いた。手紙を託した小者は、恋次が必ず行くと言っていたと言った。ルキアは初めての給金で誂え、まだ袖を通していなかった着物を支度して、日が経つのを待った。
死神の職務に就いて以来、二人は会っていなかった。詰所の位置や勤務体制の関係もあったが、一番の原因はやはり身分の差だろう。
それにルキアの心には、あの日突き放されたことが小さなしこりとなって残り、彼女自身、わざと恋次を避けている気がしていた。
でも、チャンスは来たのだ。今日会って話したら、きっとまた前の様にやっていけるはずだ。注文したクリーム白玉を口にしながら、ふふふ、と笑った。
対面に恋次の姿のないまま、1時間が経った。
『なに、ちょっと寝坊したに違いない。きっと今に…』
…店の格子戸をがらっと開けて、
「悪ぃ!」
と、昔と変わらない笑顔をするに決まっている。学院にいた頃もそうだった。
『何ヵ月も会わずに来れたのだから』
1日のたった1時間ばかり、どうということはない。
ルキアはそんなことを思いながら、黒い飾り格子の嵌られた窓から、白い学院の塔を見つめた。
2時間が経った。
店員がお茶を注ぎ足しに来たのを断ると、中身の冷たくなった湯飲みを手の中に納め、黒格子の向こうへまた目を向けた。
『…きっと何か急用ができて、遅れているだけだ』
真面目な男だから断れなくて、今頃ダッシュでここへ向かっているのだ。そう、きっとそう。
…と、その時。茶店の戸がガラリと開いた。
『来た!』
ルキアは、思わず立ち上がった。
暖簾の下に見えているのは、男物の着物の裾。ルキアは軽く駆け出した。
暖簾の間に差し込まれた手がそれを捲き上げ、男が顔を覗かせた。
…ルキアは絶句し、足を止めた。
「白哉…兄様…」
切れ長の、氷のような瞳がルキアを睨め据えていた。
「帰るぞ、ルキア」
「兄様…私…」
「帰るのだ」
にべもなく言い、白哉は踵を返した。
逆らうことは許されない。ルキアは店に代価を払い、そっと後に付いた。
「良い色の絽だ…選んだのはお前か」
「は、はい」
「そうか。良く似合う」
肩越しにそれだけ言うと、白哉は足を速めた。
『恋次……』
一番に、見てほしかったけれど。
「ありがとうございます、兄様」
手紙は、恋次には届いていなかった。
ルキアが手紙を託した小者は、そのまま手紙を白哉に渡し、白哉はそれを握りつぶした。
それがどんな思いからであったかは、誰にもわからないだろう。
■END■
作品名:BLEACH NL中心詰め合わせ。 作家名:gen