BLEACH NL中心詰め合わせ。
やさしいきもち / 十三番隊・2003.10.8]
事務仕事は苦手、と今まで怠けていた付けが回ってきて、更木剣八は捩り鉢巻きで机に向かわされていた。
食う・寝る・斬るで脳みその全てを使っている更木には、一箇所に拘束されること自体が既に地獄だった。おっ立てたファンキーなヘアから煙が上がりそうな所へ
「剣ちゃあん!お疲れさま~」
と、やちるが部屋のドアを開けて飛び込んできた。
「おぉいい所に来たな!ちょっと手伝…」
「剣ちゃん、お腹空いたでしょ一?空いたよね一!あたし、おやつ持ってきたの」
「腹なんぞ空いてないから手伝…」
「今日のおやつはぁ…じゃんじゃじゃ一ん!桜あんぱ一ん!!コレ、すっごくおいしいんだよっ剣ちゃんも絶対気に入ると思うよ一、お一いつるり一ん、お茶ちょ一だ一い」
目の前で熱でも出しそうになっている更木をよそに、やちるは持ってきたあんぱん片手に机に上がり、更に隊務から帰ってきたばかりの斑目に大声で言った。
「副官~、書類踏んでますよ」
「あり?まぁいいや、お茶は?」
「持ってきましたよ。…あ、三村屋の桜あんぱんじゃないスか、うまいスよね、ここの」
「ね一っ!はいっ剣ちゃん、あ一ん」
「……」
鼻先に突き出されたあんぱんに、更木はとてつもなく嫌な顔をした。だがやちるは構わず、
「あ一ん」
と繰り返す。五回も言っただろうか、ついに見兼ねて斑目がやちるを止めた。
「副官、これ以上はお邪魔ですよ。後に…」
「でも」
「隊長、忙しいんですから」
「…ねぇ剣ちゃん、あんぱん嫌い?疲れた時には甘いのがいいって聞いたから、剣ちゃんにあげようと思って買い置きしてたの、持ってきたんだけど、嫌い?」
そういう問題じゃねっつの、と思いながら、斑目は机の上からやちるを引っぺがした。
しょんぼりと斑目について部屋を出て行こうとしたやちるに、更木は目を向けた。
やちるもこちらを見た。指をくわえ、某アイドルチワワも裸足で逃げ出す程の、完璧なうるうる目であった。
「やちる、それを置いて行け。後で食う」
護廷十三番隊一の荒くれ親分は、負けた。
満面の笑みであんぱん袋を机に置くと、やちるはスキップしながら帰っていった。
暫くして、更木はあんぱんを食った。評判のあんぱんはちょっと堅く、変わった匂いのするこしあんは、甘くてほのかに…酸っぱかった。
翌日。
「剣ちゃ一…あり?」
「隊長なら病欠ですよ、食あたりだって」
「え一、なんでぇつまんなぁい」
「原因、あのあんぱんらしいですけど」
「ほえ?」
■END■
作品名:BLEACH NL中心詰め合わせ。 作家名:gen