さくらんぼ
side:巡音 ルカ
カイトの誕生日とバレンタイン。二つのプレゼントを背中に隠して、リビングで新聞を読んでいるカイトに声を掛ける。
「ねえ、カイト」
「うん」
「今日、バレンタインでしょ?」
「うん」
「それで、カイトの誕生日でもある訳だし」
「うん」
「だから、その、私かr」
「うん、ルカなら何着ても似合うから、大丈夫だよ」
………………。
「そう。ありがとう」
私は、プレゼントの包みをテーブルに置くと、新聞に手を掛け、下から上へ一気に引き裂いた。
「えっ!?ちょっ!!まだ読んでないのに!!」
「知らない」
カイトに背を向け、包みを手に、リビングを出る。
部屋に戻ると、メイコがヘッドホンをして音楽を聴いていた。
メイコは、スイッチを切るとヘッドホンを外し、
「どうしたの?カイトと喧嘩でもした?」
「してない」
床に包みを放り投げると、メイコは「チョコに罪はないわよー」と笑う。
「カイトは何だって?」
「私は、何着ても似合うんだって」
「あら、羨ましい。私には誰も言ってくれないわよ」
「私が言ってあげますわよ、メイコお姉さま」
「ありがと~。可愛い妹に囲まれて、幸せだわ」
メイコは、床に転がった包みを手に取ると、
「じゃ、可愛い妹は、姉の言うことを聞いて、ちゃんと渡してきなさいな」
「でも」
「はいはい、口ごたえは許しません。渡すまで、戻ってきちゃ駄目だからね」
メイコはそう言うと、私を部屋の外に追い出した。
むー。
仕方なく、リビングへ向かう。
「カイト、さっきh」
「ルカ。さっきはごめんね」
リビングに入った途端、カイトに抱きつかれた。
「え、なっ、あのっ」
驚いたのと恥ずかしいのと、久しぶりのカイトのぬくもりにどぎまぎしていたら、
「2周年だね。これからも宜しく」
耳元で、そう囁かれる。
「え?あ……う、うん。宜しく……」
……2周年?って、何が?
「ルカ?」
「ああ、うん、えっと、あの、か、カイトの誕生日、だから」
私の言葉に、カイトは心底驚いた顔で、
「ああ、そうか!俺の誕生日だ!!」
「忘れてたの?自分の誕生日を」
らしいと言えばらしいけど、と思っていたら、もう一度抱きしめられ、
「俺にとっては、ルカと付き合った事の方が大事だよ」
「え……あっ!」
言われて、何が二周年なのか、やっと理解した。
カイトは、首を傾げて私の顔を覗き込むと、
「ルカ、忘れてた?」
「わ、忘れてない!」
「絶対、今気づいたでしょう」
う……。
「わ、私は、ちゃんとプレゼント用意してたんだから!!」
「え、ああ、俺もちゃんとアイs」
「アイスなんかいらない!!バカイト!!」
馬鹿!もう馬鹿!!
アイスにつられるのなんて、カイトくらいじゃない!!
「そんなに怒らないで。食べさせてあげるからさ」
そう言って、私の頬にキスをすると、カイトは冷蔵庫へ向かう。
……バカイト。
でも、今日はカイトの誕生日だし。
今回だけ、許してあげる。
終わり