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知らないって、悔しがりたくないの

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「悪魔って、どういうことなのかしら?」
ボロボロになった身体でうずくまる出馬を、七海が見下ろしてくる。腕を組み少し考えるように眉間にしわを寄せた七海は、理知的で美しかった。
出馬は切れた唇をひきつらせながらも、笑顔でその姿を見上げる。
「悪魔?何のことや?全部、夢やで。静さん。」
「出馬くん。」
「…堪忍な。」
問いたげに開かれた口を、言葉で制止する。それだけで出馬に話す気がないことを、七海なら気付くはずだ。案の定、七海は一瞬の逡巡をえて腕をとくと、出馬の傍にしゃがみ込み嘆息した。
「とりあえず、手当てしましょう。」
しなやかな指が、そっと出馬の頬のかすり傷に触れる。七海の手が泥と血で汚れてしまうと、出馬は身体を引きそうになったが、それを七海自身が許さなかった。
「それぐらい、したっていいでしょう?どうせ夢なら、とびっきり痛くしてあげます。」
「…ハハ、静さんってサドやったんや。」
「ええ、そうかもね。特に今は出馬くんを苛めたい気分ね。」
「怖いやないですか。」
痛みのせいで冷や汗をかいているくせに、出馬は軽口をたたく。あるいは、そういう風にふざけていなければ七海の眼差しに堪えられなかったのかもしれない。
しかし、どれだけ普段と変わらない態度をとっても、間違いなく今は異常事態で日常のようにはなってくれないのだ。
「私のほうが怖いわ。」
「…っ!」
「生徒会も六騎聖も一緒に務めてきた出馬くんがいなくなるかもしれないって思って、怖かったわ。」
「静さん、」
「でも、夢なんでしょう?私の不安も、夢だと思っていいんでしょう?」
出馬の顔が、怪我の痛み以外の理由で歪む。出馬は何も言えなかった。説明も言い訳もしてやれない自分がどう言っても、結局は嘘にしかならないような気がしたからだ。
七海は静かに眼を伏せ、もういいわと言った。
「私の周りってわけのわからない男ばかりだから、慣れたもの。」
七海の唇が笑みの形をつくる。柔らかなそれは、悲しげにも見えた。
「適わへんなあ…。」
小さく苦笑混じりに出馬が呟けば、額にかすかな衝撃が走る。七海にデコピンされたのだ。
「馬鹿ね、出馬くん。あなたが私に勝ちたくないみたいだから、私が勝ってあげてるのよ。」
額を押さえて呆然としている出馬に、七海が片眼を瞑って見せた。先程までの悲しげな色を隠した微笑は、暖かく力強い。
(…本当に、適わへん。)
さあ行きましょうと肩に掴まるように指示する七海の言葉に甘えて寄りかかりながら、しみじみとそう思う。距離の近くなった横顔は、なんだかとても眩しかった。