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負け犬組

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「なあんか、面白いことになっとるみたいやで。」
携帯を軽く振りながら、複数の女生徒に囲まれている小さな身体に近付く。ふくよかな胸をクッションとした人間椅子に寄りかかる少年、雲仙は丸渕眼鏡の幼い容姿の少女が差し出した携帯画面を注視すると、にやりと笑った。
「みたいだな、鍋島先輩。」
自己紹介をするまでもなく、互いに顔と名前は知っている。鍋島を見上げる雲仙の表情はふてぶてしい。先日、生徒会長であるめだかにこてんぱんに打ちのめされた者の姿とは思えなかった。
伊達に二年生をしているわけではないのだ。他校はともかく、箱庭学園で飛び級を果たすということにはそれ相応の重みが伴う。頭の出来が良いだけの馬鹿な子どもとは、一線を画する。その証拠に、現状を予測していたような落ち着きが雲仙にはあった。
「で、鍋島先輩はそれを俺に言ってどうしようって?」
「うん、そりゃあ。雲仙くんの企みに、一口噛ませてもらおうかと思ってな。」
「こんなプリティーでか弱い子どもに対して企むだなんて、人聞き悪いぜ。」
悪者顔でよく言う。眼付きの悪さを強調する笑みに、鍋島は苦笑した。雲仙の側近たちはそれが可愛くて仕方ないのか頬を染めているが、人相を度外視したってこの少年にただの子どものような愛らしさは見出せそうにない。
「なんや考えてることがあるんは、否定せんのやね?」
「通用しない相手にまで誤魔化すような、面倒な真似はしねえよ。」
立ち上がった雲仙を、人間椅子を務めていた女生徒が名残惜しそうに眼差しで追う。下手したら雲仙の頭ほどもあるだろうサイズの胸を小さな手で一揉みすると、先程携帯を差し出していた眼鏡の少女に向かって手招きした。
「俺はアイツに期待してるんだよ。」
雲仙が足を進める先は、鍋島の予想通りの場所だろう。十三組のことは十三組に聞くのが一番はやい。そして鍋島がしたいことをするのに都合が良く話が通じそうな相手は、雲仙をおいて他にいなかった。
雲仙の背中を追いながら、鍋島は名前通り猫のようにほくそ笑んだ。
「ウチは、あの子らに、期待してるけどな。」
「…ああ、そう。」




作品名:負け犬組 作家名:六花