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Hello! I Love You!

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菊丸英二は困っていた。ぶっちゃけ、人生でも5本の指に入る位に困っていた。
 隣には、つい先日入部した話題の1年生。


 1年生とは思えないほどの大きな態度と、それを補って余りあるほどの実力。
 そのセンセーショナルな存在に興味をかき立てられ、捕らわれたのは一瞬のことで。
 その興味は尽きることなくまだ続いている。むしろ、肥大していると言ってもいいほどだった。
 熱しやすくはあるが、冷めやすくもある菊丸にとって、それは新鮮な喜びだった。
 それ以上に、その子のことを知れば知るほど、それが恋へと変わっていったことに驚きを隠せなかった。
 そしてそれは、今、すぐ側にいて。横を歩いている。


 部活中の買い出しの途中。本来ならば、1、2年生のやることだが、あいにく今日の練習はレギュラーのみ。ということで、ジャンケンで負けた菊丸とリョーマの2人が行くこととなった。
 暖かな日差し、爽やかな風、まぶしいほどの街路樹の緑。
 目で、耳で、肌で感じる全てのことがこの季節−すなわち、春−を実感させる。
 故に、菊丸をよく知る友人達は、このことを「春の陽気にあてられたんじゃないのか?」とからかうが。
 断じてない。それは有り得ない。
 その程度ならば、こんなに悩みはしない。


 ほんの少し寄ればすぐ手が届く処にいて。なのに、手を繋ぐこともできない。
 それどころか、想いすらも伝えられずにいた。
 チラリと横を見てみれば。
 何にも興味を示さないで進み続ける小さな体。
 帽子の影になって、表情を見ることはできないが、きっといつもの顔なんだろうなぁ…と、自分で考えて、少し落ち込んでみる。

 こんなに近くにいるんだから、分かってよ。なんて、勝手な言い分まで出てくる。
 あまりにも情けない、自分に。ちょっとでなく、盛大にため息をつきたくなる。
 多分10センチ位の、ほんの少し手を伸ばせば触れられるような距離。
 いつもならば勢いをつけて飛び込むことのできる他愛ない距離が、歩き始めるとヤケに遠くて、もどかしい。


 その距離を詰めることもできずに、気が付けば青春学園の校門の前まで辿り着いてしまっていた。
 荷物の重さと、それ以上の不甲斐なさに肩を落とす菊丸だが、それを尻目にリョーマはスタスタと進んでいく。

 距離が。二人の間が広がる。
 小さい姿が、もっと小さく見える。
 それがチクリと胸にいたくて。


 気が付けば叫んでいた。


「おチビーーっ!好きだよーー!!」


 一瞬止まって振り返る。
 今度は帽子に隠されることなく見えるのは、ぎょっとした、変な顔。
 でも始めてみるそれについ笑顔がもれる。



 ねぇ、恋をしようよ、とびっきりの恋を。
作品名:Hello! I Love You! 作家名:KNA