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いちご 松林檎
いちご 松林檎
novelistID. 22718
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バレンタインの夜に・・

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「ああ、だから、元親の手についちゃったチョコを俺が食べてあげるって言ったんだよ、だってもったいないでしょう?」
「お・おぉ・・・そうだけど・よぅ、どうやって・・これ喰うんだ?」
「ははは、元親、そんなの『舐める』に決まってんじゃない!!」
 元親の疑問ににっこりと答える慶次。
 そんな慶次を見て元親は更に体温が下がったように感じた。
「ま・ま・ま・ま・まてよ、慶次!舐めるってよぅ、こんなバレンタインの夜に男の手を舐めるなんてそんな悲しいこと言うなよ、おめえが優しくていい奴だって事は充分わかってるからよ、これは自分で食べるから、気持ちだけで充分だからよ」
 元親は慶次にそう言って引きつる顔で笑って見せる。
 だが、次の瞬間チョコのついた両手を慶次がガッチリと掴んだかとおもうと自分の方に元親の身体ごと引き寄せた。
「おぁぁ、慶次ぃ?!」
「ふふ、元親そんなこと言わないの、今日はバレンタインだよ、俺もチョコ食べたいし、それに元親って色白だからチョコがとっても似合って美味しそうだよ」
「は・はは、な・何言ってやがんだぁ慶次、冗談もたいがいにしろよぅ・・・おぁ!?」
 元親はそんな慶次から逃れようと、引きつる笑顔のまま身体をジタバタと動かしてみる、しかしガタイの良い元親よりも更にガタイ良い慶次は元親の両手を片手で掴んだまま、元親を逃すことはなかった。
「ああ、ほら元親暴れちゃあ駄目だよ、チョコが絨毯に落ちちゃう、まってて、今俺が舐めてあげるから」
 慶次の笑顔に薄っすらと怪しい色が掛かる。
 慶次は暴れる元親もなんのそのその両手についたチョコを舐め始めた。
「うん、このチョコ美味しいねえ、まあ見た目はちょっとあれだけど、味はいけるよ、それに元親の手の平も良い舌触り!」
 『クスリ』と笑いを含むような慶次の言葉、元親は引きつり顔を青ざめさせながら慶次に警告するように言う。
「け・慶次!本当に冗談もたいがいにしやがれよぅ、お・俺なんか美味くねぇぞぅ・・ひゃぁ!?」
 言葉で抵抗を示す元親の声が上ずる、元親の手を舐める慶次のもう片方の手がシャツの中に入ってきたのを感じたからだ。
「うぁ、ま・マジ、やめろって・・慶・次・・ふぁぁ」
「もう遅いよ、元親!今日は元親をチョコフォンデュでいただきま~~~」
『ドゴンッ!』
「何?」
 その時、慶次が『いただきます』の『す』を言いおわる正にその瞬間、先ほど慶次が蹴破った玄関が部屋に響くような音を立てた。
 そして、それに続くようにけたたましくいがみ合う声が二つ元親達のいるリビングへと向かってくる。
「HEY、元親、玄関なんで壊れてんだ?居るだろ?」
「伊達、貴様、断わりもなく他人の家に上がりこむつもりか?」
「A~N、俺と元親はそうゆう仲なんだよ」
「貴様、聞き捨てならんことをほざくな!長曾我部は今夜は我のパーテーに出席するのだ」
「HA、約束してんのか?」
「約束などはいらぬ事よ」
「HAA?約束なしでその態度かよ、HEY、元親!居るだろ?」
 声の主は元親の友達伊達政宗と幼馴染の毛利元就、激しく言い争いながら元親が居るリビングになだれ込むように入ってきた。
「HEY、元親?・・・・・?!・前田あ?!・・てめえなにやってんだ!」
 元親達の前に現れた二人が目にしたのは、元親をいただこうとしている前田慶次。
「あら~、二人とも来ちゃったね~、これからだったのになんで今日に限って来ちゃうの?」
 これからという時に現れた二人に慶次がちょっとだけ拗ねような言い方でそう言う。
「てめえ~前田あ、これからじゃないわあ~~、元親に何してやがる!!」
「そうだ、前田、貴様今日という日に長曾我部に手を出すなど言語道断、さあ、おとなしく長曾我部を差し出せ」
「ああ?」
 慶次も慶次だが元就の発した言葉に全員が元就を見る。
「What?毛利何言ってやがる、差し出せだあ?ふざけるな元親は俺のもんだ!」
「ええ?政宗、それは言い過ぎじゃない、元親は皆のものだよ」
「HA?皆のものってなんだそれは?」
「そうだ、前田、伊達の言うとおり、皆のものというのは納得がいかぬ」
 当の元親を差し置いて、エキサイトする3人。
「HAN、元親を皆のものと言ってるおめえが手を出してんだろうが、ああ?前田あふざけんじゃねえぞ」
「ええ、だって今日はバレンタインじゃない、ロマンティックな夜に元親と2人っきりになりたかっただけだよ」
「2人っきり?前田、貴様それは皆が思っていることぞ」
「AA、そうだ、今日、元親と二人で過ごすのはこの俺なんだよ」
 なぜだか、自分をめぐって繰り広げられる修羅場に元親はめまいを覚える。
 元親はこの状況に失神したくなっていた。
 すると政宗が一言、言った。
「OK、わかった、まあ薄々は気付いていたがよ、今日はいい機会だ、元親がだれのものかきっちりケリをつけねえか?」
 元親の思考が停止を宣告し始めた、だがこのままだと、とても自分に拙い展開になりそうだと、元親は勇気を出して3人に言った。
「ちょ・ちょっとまておめぇ等、お・俺は誰のものでもねぇぜぇ、俺は俺のものだ、誰の者でもねぇ!!」
 するとその言葉に、3人は元親を見る。
 政宗・慶次・元就3人それぞれがお互いを見るように目をあわすと、それぞれが薄ら笑の顔をした。
 3人は声をそろえて言った。

『おめえ(貴様・元親)は黙っろ!!(てて!!)』

2月14日バレンタイデー・夜 元親をめぐる争奪戦が一晩中続いたのは言うまでもない。
(そしてチョコフォンデュも盛り上がったのは言うまでも・・・・ない。薄笑)

おしまい
(落ちない・・・・・汗)