THW小説4.8 番外編 ~イロノナイセカイ~
ドクン
・・・心臓が,鳴る。
ドクンッ ドクンッ
・・・鼓動が,五月蝿い。
そんなことを思いながら,ゆっくりと目を開く。
そこは,真っ赤な世界。
血の海の中に,俺は立っていた。
周りには,幾千もの折り重なる,死体
腐敗臭
その中で,佇んでいたのは,
俺,一人。
・・・何が,あった?
何故,俺は立っている?
どうして,俺は生きている?
両手を見る。
血に染まった手。
俺が,斬ったのか。
・・・何故,俺は無傷なんだ?
――――全身に浴びた血が,
できれば俺のものであってほしかった。
・・・何故,こんなことになった?
――――幾千の命の上に
立っている資格も意味も
俺にはない
――――そして・・・どうして,俺は・・・
笑っている・・・・??
震える目で,周りの死体を見る。
そこには,自分が大切にしていた,仲間達の遺体があった,ような,気がした・・・・
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「うわあぁああぁああぁああああぁああっ!!」
自分の叫び声に吃驚して,ガバッと身を起こした。
「はあっ,はあっ,はあっ・・・!!」
まだ,動悸は収まらない。
全身,汗でびしょ濡れだ。
俺は,Tシャツの上から,ドッドッドッと鳴り止まない心臓をわしづかみにする。
「ここは・・・?」
白,以外,何もない部屋。
ベッドも壁も,家具も,全てが白で統一されていた。
ガチャッ
「気が付いた?碧風くん♪」
「めいみ姉さん・・・?」
カラカラカラ・・・と,食事やら点滴やらを乗せたワゴンを押して,
めいみさんが俺のベッドサイドに近づく。
「俺・・・なに・・・?なんでここに・・・?」
「あらん,覚えてないなら今はその方がいいわ♪ちょっと検査が必要だから,あと2,3日入院してもらうわね♪」
そう言って,
「一本イくわね♪」
と,ちゅ〜っと注射をする。
「何・・・俺,何のビョーキ?」
「ん〜〜,ま,それは検査次第だけど。心配ないわよん♪」
「そう?」
「それより,お腹すいたでしょ?丸二日寝てたもんね〜」
「うそ,マジ?」
「マジマジ。おかゆ,作ったから,食べさせてあ・げ・る♪ はい,あ〜ん♪」
「あ〜ん」
なんて,俺は素直に食べさせてもらった。
二日寝てたってのは本当かもしれない。
全身の筋肉が,カチコチだった。
「ごっそーさん」
「はい,お粗末さま♪」
ペロッとおかゆを平らげると,だんだん眠くなってきた。
「めいみ姉さん・・・俺・・・なんかここんとこ・・・覚えてないんだけど・・・」
「そ〜ねぇ,まぁ,無理に思い出さなくてもいいわ。あ,そうそう♪」
ゴソゴソ,と白衣の胸元をさぐると,メモを取り出す。
「ジンちゃんから伝言よ。読むわね。
『光あれば,闇もまたある。
だが,闇の中に光はない。
ならば,私が闇の中の一筋の光となりましょう。
碧風さんに,光の御加護がありますことを。』
・・・ですって。・・・ってあれ?寝ちゃった??」
めいみさんの言葉が,夢うつつに聞こえたような・・・
「今は,ゆっくりお休みなさい。碧風くん♪」
ちゅっ,と額に,キスが降りた気がした。
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一方その頃・・・
「ふぅ・・・ったく,あいつめ・・・!」
ザビは,まだ完治しない足の傷の治療のため,病院に来ていた。
「・・・砂は,苦手だな。」
ふーふーと,両足首の傷に息を吹きかける。
「あらん♪隊長様♪」
ザビを見つけ,めいみが近づいた。
「おう,めいみん。まったくよー,あのバカ,やってくれるよなぁー」
みてみてこれぇ,と,めいみの目の前で足首をプラプラさせる。
「ねぇ,隊長様。その当人さん,目を覚ましたわよ。」
「・・・ほんとか?んで,どーだった。」
「・・・詳しくは,検査しないとわからないけど,やっぱり何も覚えていないみたい。」
「そーか。その方がいいな。」
・・・少なくとも,“あの事件”は,世間を賑わせていた。
千葉,神奈川の両軍激突地で,謎の両部隊全滅。
死者,およそ2000人。
生き残った者は,誰もいない。
「・・・これ,すごい爆弾かかえちゃったんじゃないの?」
「まーな。だが,それでこそ面白いwww」
ザビは,不敵にニヤリと笑う。
「さっすが♪ドS様健在ね♪」
「おうよ!あいつ,絶対飼い慣らしてやんぜwwww」
そう言って,目を合わせて,不気味な笑いをする二人であった。
光あれば,闇もまたある
だが,闇の中に光はない。
しかし,闇の中にだって,きっと一筋の光はある。
仲間,という名の。
それを,信じて――――――――――――――――
2011.02.17
作品名:THW小説4.8 番外編 ~イロノナイセカイ~ 作家名:碧風 -aoka-