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いつも思うのは「綺麗」の二文字だった。
芸術も自然も綺麗だが、それとはまた別の「綺麗」が彼にはあった。
彼は男だし、そこらへんの美女へ声を掛けた方がよほどましだと一年前まで思っていた。昔は敵として戦っていたし。
目つきは悪いし、なんか怖そう。それが第一印象だった。
しかし、世界が安定してきた今、人は見た目ではわからない事がよ<わかった。
今までずっと見た目で物事を判断してきた自分が恥ずかしい。(謝る気なんてないけど)
もし彼に「綺麗だよ」って素直に伝えたら、どういう反応をするだろうか。驚いて大きい目をさらに大きくしてこちらを見るだろうか。恥ずかしい事を言うなと言って顔を真っ赤にするだろうか。それともにこやかに笑ってありがとう、と礼を言うだろうか。
どの反応も見てみたい。彼の表情、喜怒哀楽を全て知りたい。
そんなの、ただの独占感。彼を独り占めしたいと思っている。
俺は女の子好きで有名なのに、いつから男の子好きへと変わったのだろう。心とは恐ろしい。
もちろん今でも女の子は好きだよ。
でもそれ以上に彼が好き。
これはまだ誰にも明かしてない秘密なんだけど。

俺が想ってる人はある日急に電話をよこした。
なんでもイ夕リア観光をしたいから俺に案内して欲しい、ということだ。
二泊三日。その間、俺達はほとんど一緒の場所で過ごす。
ホテル代が勿体無いから、俺の家に泊まりたいとも言ってきた。まるで遠距離恋愛をしている恋人みたいな会話だ。俺と彼は友達以上ではないけれど。
俺は彼の提案や誘いには全て賛成した。電話向こうの彼が嬉ぶ声が聞きたかったからだ。
しかしここまで無防備な彼を見てしまうと、俺が悪魔のようだと感じてしまう。


「このジェラ一ド美味いある!」
「そうでしょ?俺の一番のオススメのお店さ。」

一日目。今は町中の美味しいと評判のおしゃれなジェラード店へ来ていた。
中国は美味しいものや楽しいことが好きだと聞いた。それは日本からの情報だったので疑いはなかった。逆に言えば、それが普通なのだが。悲しいことや痛いことが好きな人なんて出会ったことも聞いたこともない。
電話の後、どこへ連れていってあげようかと迷ったが、俺が好きな場所へ行くことにした。
俺も楽しいことや美味しいものが好きだから問題はないだろう。

花で飾られているようにプリントされた力ップに入った冷たいバニラ味のジェラ一ド。それをプラスチックのスプーンで掬っては食べすくっては食べをくり返している彼を見る。
中国の食べる姿は本当に美味しそうだ。
自分も同じ物を食べているが、彼はそれ以上の高くて上品なものを食べているようだった。
自分の手にある半分溶けてしまったそれを食べてみる。うん。いつものジェラードだ。


***********


「中国の背中って、すごいね。」
「は?」

日も落ちすっかり暗くなった外では建物の光や街灯がイルミネーションのように夜を装飾していた。
イタリアと中国はベランダに出てその綺麗な夜景を静かに眺めながらお茶を啜り、食後のデザートを机に並べ、それを口に運んでいた。
お菓子特有の甘い香が時々鼻腔を刺激する。
特に話すこともなく黙っていたが、ずっと思っていた事を言霊にした。

「何がスゲーあるか?」

彼は不思議そうにこちらを見つめる。その反応に満足した俺は素直に質問に答えてやることにした。

「だって、そんな大男みたいに広い訳でもないのに大草原みたいにどこまでも広がってるようで、何かそこにあるように引き寄せられる。不思議。だから………」

だから日本が中国の背中を切りつける気持ちがよくわかる。と言いかけた口を閉じる。そんなこと口走ったら獅子が目覚めてしまうかもしれない。中国が先を気にしていたのでお茶を一口飲んでみせた。
口の中に残留していた甘みが一気に消え失せる。
中国はしばしの沈黙後あぁ、と短く何か思い出した様に抜けた声を発した。

「昔、お前と同じような事言っていた奴がいたある。」
「え?」

俺と同じ?ということは、その誰か、も中国の背中をそういう風に捉えていたのか?ー体誰だろう。
「誰が言っていたの?」
好奇心に勝てず、質問をした。立場が逆転しているな、と気付いたが、これが会話だ。
昔、ということは日本とか……いや、そう遠くないかもしれない。第一その「昔」というのは人間の時間感覚のことか国としての時間感覚か……。
ニ百年前かそこら辺か。
しかし、中国の発言は、それらを大きく裏切った。

「大泰ある。」

驚きで持っていたお菓子を手から落としてしまった。
それが机に当たって粉々に砕けた。

まさか・・・・まさかローマ爺ちゃんだったとは。
さすが、俺の爺ちゃん。血のつながりがある。よく似てる似てるとは言われ続けていたが。
と、いう事は、ローマ爺ちゃんも中国が好きだった?
色々な物事、考え事が頭の中でぐるぐる廻る。
さすがの俺でもパンクしそう。普段からこんなに物事は考えないものだから。
中国がそれに気づいたのか、伊国?とこちらの様子を伺った。

「我と大泰は、友人だったある。それ以上に何もなかったあるよ。」

俺の事を気遣ったのか、中国は今さっきまで口にしていたお茶とお菓子をテーブルに置いた。
なんだ。友人か。
体から何かが抜け出たように、気持ちが軽くなる。
今までの重い荷物が全てどいた。ほっと息を吐く。

「へー、さすが血が繋がっているだけあるね。同じこと思っちゃうなんて。」
「・・・・伊国」
「ごめんね中国。驚かせちゃって、」
「伊国!」

水を打ったように静まり返った部屋は、驚くほど怖かった。
思考回路が停止する。

「・・・」
「な・・・なに?」
「言いたい事があるなら、言うよろし。」
「・・・・え?」

二人だけ居座るにしては広い部屋に自分の声が木霊する。
今日は驚くことばかりだ。
中国が来てくれて嬉しい、より中国が来てびっくりだ、という思い出が残るのかと思うほど驚かされている。
いつも口から言葉が止まらずに吐き出されているイタリアも、さすがにこれは黙り込んでしまう。
視線を合わせていえられずに、自然と頭が下がってきた。

「はは・・・・っよく・・・わかったね。」
「伊達に四千年生きてねぇある。」
「・・・・あはは・・・・じゃあ、言ってもいい?」
「許可は出したある。」

その中国のまっすぐな視線に負けた。
身長も小さい、なのに沢山食べる、そして仙人なのにかわいい物好き。
とても可愛いではないか。と、思っていたが、フンイキというやつで、こんなにも中国の見た目が変わるのか。
一見キレイに凛と咲いた花のようで、触れると散ってしまいそうだが、本当は踏まれても踏まれても決して折れない花だった。

「あのね、」

ここはいつもの様にはっきりきっぱり言ってしまおう。伝えてしまおう。そおうするべきだ。

「俺、やっぱり中国が好きみたい。」

彼の痛いほどの視線を、今度はしっかりと目で受け止めながら、相手に自分の心の内を明かした。
と、中国がふと笑った。
さっきまでの表情とはまるで違う、子供のような笑顔だった。

「昔、お前と同じようなこと言っていた奴がいたある。」
「誰が言ってたの?」笑顔で聞く。

「大泰ある。」
作品名:again 作家名:菊 光耀