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終わらない旅

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私の名はクリフト。
 実は今、途方に暮れています。
 ここは港に停泊した船室の中。目の前で、私の仲間たちの狂乱の宴が繰り広げられているのです。床の上には無数の小さな酒樽が転がっています。勿論中身は空ばっかり。仲間たちの体内へ消えていったのでございます。

「ぶはははは、ま、マーニャどのぉ、そ、それでどうされたのですか!?」
「もうねっ、わらひが舐めてあげてもナニしても、ぜんっぜんたたないんでやんの! やってられっけーって感じよぉぉ」

 ケタケタと笑いながら話すマーニャさんとトルネコさん。ああ、奥様がおられるにも関わらず、裸同然の女性を膝の上に抱え、胸と言わずお尻と言わず腰と言わず撫で回しながら酒をあおるとは。息子さんが泣いてますよ、お父さん。ブライ様も横から手を出して脚を撫でていらっしゃるし。この色ボケじじぃが。王にチクリますよ。

 彼らの横では、ミネアさんとライアン殿が肩を寄せ合いながら静かに杯を傾けています。端から見ればまともそうに見えるけど、話す内容に耳を傾けると、やはり猥談なのです。

「そして、私は朋友の死を彼女に伝えたのです」
「まぁ、悲しかったでしょうね」
「はい。未亡人となった彼女は泣き崩れ、私の胸の中へ飛び込んできたのです。もちろん、胸は貸しました。すると、彼女は今夜は一人ではいられないと呟いて……」
「ら、ライアンさんは、一人にしなかったのですね?」
「……その通りです」
「あっ……一晩中……慰めてさしあげたのですか?」
「と言うか、一週間ほど存分に」

 ら、ライアン殿……すごい!
 ミネアさんの顔が赤く染まっていて、お酒のせいかと思っていたら、何かミネアさんが着ている服がもぞもぞと動いているではないですか。なんと、ライアンさんの右手が、いつの間にやら彼女の肢体をまさぐり始めていたのです。「紅の騎士」の二つ名は伊達ではありません。戦場に出れば敵軍の返り血で全身が真っ赤に染まるライアン殿は、プライベートでも処女の返り血で真っ赤っかなのですね。
 ああ、そんなことを考えているうちに、ライアン殿の舌がミネアさんの口内を思う存分に蹂躙し始めているではないですか。ちゅぱちゅぱと言う擬音が聞こえて来そうです。右手は彼女の背中へ、左手は彼女の最も敏感な部分へと向けられ、もぞもぞと愛撫を続けています。ライアン殿の指揮する部隊は一点突破が得意技と聞きますが、プライベートでは包囲攻撃がお得意なのですね。そして最後は一点突破でございますか。

 そして、我が姫はと言いますと……。
 ユーリルと一緒になって、マーニャさんたちの猥談に参加してました。ああ、姫様、そんなにユーリルにしなだれかかっては、そのぽよんとしたお手軽サイズの胸が彼の腕に当たって、ハイパーマウンテンがそびえ立ってしまいますよ。あ、もう盛り上がっちゃってました。少し離れたここからでもよく見えます。
 …………。
 ……姫様、気付かないフリをして手をそこへもっていくなんて、はしたないです。こんなことを国王が知ったら、王自ら雲隠れしたくなりましょうぞ。ユーリルも興奮してきたのか、アリーナ姫様の流れるような素足を遠慮がちに撫で始めたし。あ、横ではブライ様とトルネコさんがマーニャさんをすっぽんぽんにして二人で攻め始めてます。

 このままでは、乱交パーティ突入ですね。そうなる前に止めなければなりません。

 しかし、この場で唯一まともな思考能力を残している私は動けませんでした。なぜなら、私の膝の上にはシンシアさんが頭を乗せてスピスピと眠っているからです。彼女は早めにダウンしたけど、まさかこんな状況になっているとは思わないでしょうね。
 あ、ついに、愛しのアリーナ様がユーリルにひんむかれ始めました。やはり勇者様にはお姫様がお似合いですか、パーティの女性は棒姉妹ってのが勇者的ですか。ああ、マーニャさんはオッサン組に前後から攻められてるし、ミネアさんは服を着たままライアン殿に挿入されちゃってるようです。こんなのを眼前に見て、男として冷静でいられるはずがないではないですか。もう、私のハイパー兵器もいつでも発射オッケー状態。
 と言うわけで、眠っているシンシアさんを襲うことにします。夜這いって感じでとても燃えますね。乱交ばんざーい。そう頭の中で叫んで、私はシンシアさんの上へ覆い被さったのでした……。





「なんてことになったらどうするんです! 船室での宴会はやめときましょう!」
 しばらくポーッと宙を見つめていたと思ったら、いきなりそう熱弁をふるい出したクリフトを見て、ユーリルは呟いた。
「クリフトさん……たまってるんですね……」
 こくり、とアリーナは頷き、溜息をつくのだった。そして考える。
(まったくクリフトったら……。欲求不満なら、私がいつでも解消してあげるのに)

 ユーリルたちの平和な旅は、果てしなく続く。


(おわり)
作品名:終わらない旅 作家名:高耶