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【00/ニルアレ】年齢逆転パロ2

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艦内に設置されているガンダム用のシミュレータは、単独ミッション・モード、共同ミッション・モード、対戦モード等様々な事態を想定したバーチャル・ミッションや戦闘パターンが組み込まれている。
その結果は最新のものから百件ほどをいつでも閲覧できるようになっているのだが、百件のうちの八割がロックオン・ストラトスとアレルヤ・ハプティズムの名で占められていた。
だからといって、他のマイスターである刹那やティエリアがシミュレータをあまり利用していないという訳では決してない。
ただ単に、先に挙げた二人の利用率が尋常ではないだけの話だった。

「くっそ、もう一度だ!今度は機体も入れ替えるぞ」

「ロックオン…シミュレータの意味、分かってるよね?僕がデュナメスを乗りこなせるようになっても、君がキュリオスを乗りこなせるようになっても何の意味もないんだけど」

どうも、ロックオンはシミュレータをゲームか何かと同一視している節があった。
シミュレータで共同ミッションを行った後、戯れに対戦モードで相手をしてやって以来、彼はどちらかというとバーチャル・ミッションよりもその後に行う対戦の方に熱中してしまっているようなのだ。
窘めたいのは山々だったが、最初に「相手をしてやる」と言い出したのが自分だったことを考えると、どうにも言いづらい。
やんわりと止めるように促してみるのが関の山で、やはり今日も、その意図は通じなかった。
…いや、彼のことだ、わかっていても無視しているのかもしれないが。

迷惑だ、という風な表情を作って弟分を見やったつもりのアレルヤだったが、しかしその表情が迷惑というよりは手のかかる弟を「仕方のない子だ」とでもいう風な穏やかな眼差しで見やる兄のようであることを自覚していなかった。
ある意味本人以上にアレルヤの内面の動きを読み取っていたロックオンは、それ故に、彼の押しの弱さに思いっきり寄りかかる。

「俺たちのどっちかが負傷したら、このシミュレーションが役に立つだろ?」

「その前に僕たちは撃墜されていると思うよ」

とってつけたような理由で自分を誘うロックオンに、アレルヤはもっともらしい意見で反論する。
しかし、既にやる気満々の彼は、正論を並べられようが引くつもりはないらしかった。
五分にも及ぶ押し問答を経て諦めが九割を占めてしまったアレルヤは、とうとう白旗を振ってデュナメス用のシミュレータへと足を向ける。

「…言っておくけど、本気は出さないから」

振り返りざま、左目だけでロックオンを見つめながら、アレルヤが不敵な笑みを浮かべた。
それは、普段の穏やかさとは一線を画した、戦う者としての冷徹さを含んだ笑みだった。
恐らくはロックオンのやる気をそぐ為にあえてそんな笑みを浮かべたのだろうが、それは逆効果で、余計にロックオンを燃え上がらせるだけに終わる。

「――――――上等」

同じような性質の笑みでそう返したら、逆効果だった事をすぐに理解したのだろう、アレルヤが一瞬、いつもの困ったような笑みをみせた。

(…まったく…どこで間違えたかな)

シミュレータのコックピットへと収まると、まだ接続したままだったハロが賑やかに出迎えてくれる。

『アレルヤ アレルヤ』

「ごめんね、ハロ。もう一戦頼むよ」

『リョーカイ リョーカイ!アレルヤ サポートスル!』

言うが早いか、すぐにハロはライフルの粒子圧縮を開始した。
デュナメスはとにかくこのスナイパーライフルでどれだけ正確に撃ち落せるかが重用だ。
一撃一撃が強力である為、ガンダム同士の戦いにおいてもこの一発が当たるとダメージが大きい。
それを誰よりも理解しているロックオンは、キュリオスの機動力をフルに生かして、上空を縦横無尽に飛び回っている。

「でもね、ロックオン―――――」

人間である以上、動きは完全不規則とまではいかない。
つぶさに観察しているうちに、ある程度の規則性があることに気づいたアレルヤは、攻撃を防ぎながらタイミングを計る。
駆動部に当たらないように注意してシールドで受けきれば、いかに同じガンダムといえど、一撃の威力で劣るキュリオスにデュナメスを落とすことはできない。
自身が普段から扱っている機体だからこそ、その弱点もよく分かっていた。
だから、普段アレルヤは攻撃の際、確実に破壊できる箇所を狙って攻撃している。

「そこだ!」

慣れないライフルのスコープ越しに狙いを定めたアレルヤは、迷わずトリガーを引いた。
若干早すぎたかに見えたが、GNスナイパーライフルの一条は飛び回っていたキュリオスの肩を見事撃ち抜き、片腕を地へと落としていく。

『…っやったな!』

すかさず、ロックオンの悔しそうで嬉しそうな音声通信が入ったので、苦笑を返しながらガンカメラ・モードのまま仮想空間の大地を蹴った。
本来ならそのまま次の狙撃タイミングを狙うところだが、それほど長くシミュレータで遊んでいる訳にもいかない。
早く決着をつけてしまおうという魂胆から、普段のロックオンのように無謀な行動に出る。
今度はロックオンが苦笑したが、構わずにスナイパーライフルを構えてみせた。
隻腕になったキュリオスは、挑発するようにわざわざ正面で滞空している。
まだチャージを終えていないスナイパーライフルがハッタリだと分かっているが故の行動だろう。

「攻撃は、ライフルだけじゃないっ!」

『なにっ―――――』

ライフルを構えたまま、アレルヤはライフルを持っていない方の腕ですばやく腰のホルスターからGNビームピストルを抜くと、コックピットのすぐ傍を撃つ。
距離があったせいもあり攻撃自体は装甲を焦がすだけだったが、その衝撃でよろめいた隙をついて今度はサーベルを抜き、コックピット目掛けて思い切り振り下ろした。
焦がした部分を狙った為なのか、サーベルは思った以上に深く装甲を貫き、甚大な損傷を受けたとアラートが告げている。
それは、実戦ならコックピットは既に亀裂が生じているレベルの損傷だった。

『………!』

「勝負あり、だね」

『ショーブアリ ショーブアリ!アレルヤ ショウリ!』

サーベルを突きつけたまま宣言すると、ロックオンはとうとう白旗を揚げる。
そのままシミュレータを終了させ、彼は渋々といった様子でシミュレータ用コックピットから出てきた。

「……ったく、どうやったら勝てるんだよ」

「うーん…経験、とか?」

「あのなあ、それじゃ年下な分、ずっと俺が不利じゃねえか。」

「その分練習すればいいんだよ」

「練習なら、こうして―――――」

「ロックオン、君が今乗っていたのは何だったか、覚えているかい?」

「………」

「もう、ちょっと頑張れば、君は僕なんかよりずっと強くなれるのに」

軽くため息をついてそう零すと、とんでもないとばかりにロックオンは肩を竦めた。

「そりゃ買い被り過ぎだ」

「お世辞で言っている訳じゃない。僕は本気で思っているんだ」

「ハロもサポートに入ってるし、って?」

「?どうしてそこでハロが出てくるんだい」

「……」