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それともわたしにしますか旦那様

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休憩の度々に現在地が近ければ訪れる公園のベンチには、主に日向ぼっこするに適した天候の折り、互いに名も知り得ないが顔馴染みが出来ていた。
陽光に目を細めるどころか閉じきって半ば蕩けてしまいそうに肢体を丸める馴染みに、二言三言を聴いているのだかいないのだかもお構いなしに頭上から掛ける。
生き物を飼うには余りにも自分に信用がないので叶わないが、飼いたくないとは言えなかった。寧ろ、許されるのならそれはもう。そう一人ごちるだけに留めて溜息を控えめに吐く。
くっ付き過ぎず遠くはない距離を、出逢いの頃よか上手く取るようになった馴染みは口内の意外と鋭そうな牙を見せて大きな欠伸をしていた。
懐の深い上司が自分を呼ぶ声がする。立ち上がり猫のように伸びをして、じゃあなと告げた後ろを着いて来ていたらしかった。
大型車が通ろうとする路に飛び出してしまったというアクシデントに固まった猫は、すぐさま動けないものがいる。我に返った時には間近の風も通過し終わり、腕の中には小さな体温を抱いていた。
頭を一撫でしていつものベンチに乗せてやり、気を付けろよ、と言い残し中断していた仕事に戻った。それから数日が経過しても最後に馴染みと会ったのはそれきりである。





意識がぱっちりと覚める前後、何やら胸の上に違和感が一つ。寝呆け眼に片腕を伸ばし、わし、とばかりに適当な処を摘み鼻先に運ぶ。
戸惑うまでに暖かく、ぐんにゃりと折れてしまいそうに柔らかでいて小柄な毛玉の塊のそれが、此方の鼻の頭をざらついた生暖かい舌先で撫でる。瞬時に冴えた意識の協力で瞼を最大限にまで押し上げた。
化け猫は自分で扉を開閉出来るんですよ、と穏やかな声音が朝日と共に降ってきた。恩返しをさせて下さいな、と幼い、けれど自我がある年の頃の子供の声で人の言語を滑らかに操る猫に、人にあるしがらみや害する故を持つこともないだろうと思考して、ああ、と簡素な許可をした。

猫の居る生活は潤いがある。喋る猫ならば尚更、会話が成立するのだからとてもたのしい。日常の何気ないことでも粒さに、公園のベンチでの遣り取りがそっくり移動した風に話しては返答をするようになった猫とのお喋りがある生活は続いてゆく。
嬉し恥ずかしながらも違いを示せば、以前よか触らせてくれる相手は更に懐いている様子で、身体を擦りつけてくるようにして寄ってくる。動かないでいてくれる喉元を恐る恐る撫でて鳴る音に耳を傾ける、至福の時を甘受する。触れることへの不安がその毎に少しずつ解かされてゆく。
しかして食生活に対し、知識を何処からか仕入れてくる相手は心配の果てに手製の弁当を作っては此方に持たせるようになった。最初の方では素人がいかにも、という中身が並ぶ。十二分に可愛らしくありがたかったが納得がいかない当猫は研究を重ね、最新作はいいお嫁さんとなれるものをこしらえる。
肉球も癒しの要素な猫の手で。化け猫は器用らしい。
毎朝何かしらに飛び乗り位置を高くした相手へかがんでやり、濡れた鼻先を頬に押し当てられいってらっしゃいを言われる。猫、もとい嫁の居る生活は成程潤いがある。


決して台所を使用している間を覗かないで欲しいんです。そんな初回の申し出をつい記憶の片隅に追い遣ってしまい、弾みで注意を払うべき区域のよりにもよって該当時間に足を踏み入れてしまっていた。否、この頃此処に滞在する時間がめっきり延びていたのであえて呼び掛けなしに入ったとも言えよう。
シャツの採寸が合わずに細い肩も露わな上に、何処からか引っ張り出してきたと思われるこれまたずり下がるエプロンを着用した、小柄な黒髪の少年と目が合う。纏う湯気と滴れる滴も構わずに幾らか立ち往生をした。
まずは風邪をひいてしまうことのないようにと言われ衣服を着て向かい合う。
猫を飼いたかったんですよね。ごめんなさい、こんな姿ではいけないのでは。
眼球の表面を濡らす相手に無言で、猫の面影通りのひくりと動く尖った形の耳と耳の真ん中に手を置きわしわしと動かす。一応は撫でているつもりなのだが武骨な自分ではこれが大変難しい。気持ちが伝わるようにと撫でる。ひたと撫で続ける。
小作りの唇で紡がれる。長時間維持すると、姿が固定されていってしまうんです。
小さな震える声の間も撫でる。
段々と小柄な身体から力が抜け寄り掛かるそのこが眠たそうに瞼を降ろしてゆくので、おやすみの挨拶をした。





ちゃんと食わせてるのに、どうして小さいままで大きくならないんだ?
体質ですかね。それに言う程小さくありませんよ。
いや、うっかりしてしまいそうなくらいなままだ。
そりゃ朝の挨拶はいつもかがんでもらっていますけども。

そう言ってはいてもつむじは可愛らしいし膝に乗せてお茶の間でくつろぐのは心地よいので、腹の内ではそのままでもよいと思っている。