circus at darkforest 1
町の真ん中の公園。噴水の前で楽しそうに話し掛けるフェリシアーノ。手には、何かのチラシを持っている。
「サーカス…?うちの町にはそんなもの無いぞ?」
眉根を寄せてフェリシアーノの顔を見るルートヴィッヒ。
「あるんだよ~。ほら!」
「ふむ…森の奥か。移動型のサーカスだろうな。」
フェリシアーノの持っていたチラシには、黒い紙に赤い文字で書かれている。
どうやら、その劇団は、〈despair〉と言うらしい。
despair…絶望という名前にも惹かれる。
「たまには、良いかも知れんな。いつ行くんだ?」
チラシを一通り読み終えたルートヴィッヒが、顔をあげてフェリシアーノに質問を投げ掛ける。
「えっ?今日だよ~♪」
さも当たり前の様に答える。
その言葉に、ルートヴィッヒが目を見開く。
「今日って…まぁ良いか。」
反論をしようとしたが、今からフェリシアーノを説き伏せるのは、時間がかかる。無駄に時間を使いたくはないルートヴィッヒは、仕方なく諦めた。
「じゃぁ、6時にここに待ち合わせだよ~♪」
それだけを言うと、手を振って家に走って帰るフェリシアーノ。
その様子を見送ったら、ルートヴィッヒも家へと歩きだす。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆
昼だというのに、薄暗い森の奥。黒と赤のテントから声が聞こえてくる。
「耀さん!衣装ですよ!耀さんのとってもかっこいいですよ!早く着てください!」
はしゃいだように声をあげる菊。
「当然あるな。どれ、貸してみるよろし。」
そう言って、菊の手から服を受け取るとすぐに着替える耀。
「っと。…どうあるか?」
耀の服は、タキシードを元にしてあり、それを少し滑稽な感じに仕上げてある。
「似合ってます!…私のも、見てくださいますか?」
おずおずと言った感じに、顎を引いて上目遣いになる。
「当たり前あるよ。早く着替えるよろし。」
そんな耀の言葉を聞いて、顔をほころばせ、着替えだす。
左目を覆っていた包帯の下からは、毒々しい紅い目が顔を見せる。
「着れました…!…どこか、変ですか?」
首を傾げている菊の恰好は、どこからどうみても、子供の女物だ。
白を基準とされた、花のミニドレスで、頭の上には小さな花の冠も。
「良く似合ってるあるよ!可愛いあるぅ~♪」
そんなことを言いながら、菊の頭を撫でる。
「耀さん~?菊さん~?」
二人を探す、トーリスの声がして、声の方へと顔を見せる。
「何あるか?」
「リハーサルの時間ですよ!!」
「えっ…もうですか…?急ぎましょう!」
走り出す、3ッの陰。
それは、また摩訶不思議な姿をした3人だった。
作品名:circus at darkforest 1 作家名:黒白黒