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お昼ご飯を作ろう!!

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軋峰が仕事場に籠もってから三日。軋峰さん家のボカロ三人が掃除や洗濯や解凍ご飯に飽きてきた頃だ。お昼のワイドショーを流しながら、海は今まで溜めた楽曲データの整理を、紅は何処から持ち出したのか広辞苑を読み出し、玄は部屋の隅っこでアイスピックを磨いている。
「今週のミクミクお料理教室は、誰でも簡単!ボカロでも出来ちゃう簡単レシピっ!!だよ。」
テレビから聞こえる初音ミクの声に、三人はそれぞれの作業を中断する。最近始まった料理番組では、初音ミクがマスターの為に料理をするなんて萌え要素満点なもので、軋峰家のボカロもはまっている。料理は基本軋峰が全てやっているが、三人とも家事炊事のプログラムはダウンロードされている。
「これ、作ったらますたー喜ぶ?」
「喜ばせる前に、部屋から出てこないとな。」
「でも、マスターにご飯作ったよって言ったら出てくるかもね。」
海の何気ない一言に、帯人は手にしていたアイスピックをポケットに収納し、紅は広辞苑を仕舞う。言った海自身も楽曲のデータ整理を途中で停止する。
「お昼ご飯、作ろう。」
キッチンは綺麗に整理されている。冷蔵庫の中身は十分だ。包丁、鍋、フライパンなども揃っている。
「まずは、お米洗ってご飯炊かないとね。」
計量カップで測るかと思いきや、帯人はいきなり素手で米を掴む。それを電気ジャーの窯の中に放り込みながら、正確にグラムを計測。ついでに、水の量も測ってしまう。二足歩行を可能にする測量機能なのだが、無駄に高性能なおかげで僅かな誤差も許されない無慈悲なご飯。
「卵、砂糖、塩、混ぜたらアイスになるね。」
「馬鹿か。昼飯アイスってどんだけなんだよ。」
乱暴に卵をかき混ぜる紅は、誰も見ていないのをイイ事に、溶き卵の中に大量の一味を投入。それから、軋峰に買ってもらった唐辛子の粉末も全て入れてしまう。真っ赤な卵はそのままフライパンの中へと注ぎ込まれるが、肝心な油が引いてない。すぐに熱したフライパンの中で卵は真っ黒に焦げていく。すでに、原型が何か分からない上に真っ黒で正体不明だ。
その隣で、海は鼻歌交じりに何かを刻んでいる。多分、きっと、元は玉ねぎだったのだろう。みじん切りを越えて既にペーストだ。それを水の中に入れて、今度はそこに味噌を投入。それからようやく火を付ける。
「海、紅、ご飯、ぴーって。」
「あ、炊けたんだね。」
湯気を上げる電気ジャーは無事らしい。が、米を洗剤で洗っていたので味は無事じゃないかもしれない。

軋峰はパソコン画面からようやく視線を外す。明日締め切りの原稿案が送られてきたのは四日前。それから即効で冷凍できるおかずをしこたま作ってから、軋峰は部屋に籠もって一歩も出ていない。トイレとシャワーだけが、部屋を出る時間。それ以外はずーっと画面と睨めっこをしていた。限界を訴えるのは目だけじゃない。
「飽きたな・・・。」
カロリーメイトを齧る生活も飽きてきたし、正直そろそろ白米が食べたい気分だ。山盛りになった灰皿を片手に部屋を出てキッチンへ行く。と、軋峰の耳は異音を捉える。キッチンから聞こえる悲鳴やら何やら、それから、食器の触れ合う音。微妙に焦げ臭いリビング。取り合えず、テーブルに灰皿を置いてから、そっとキッチンを覗く。青と赤と黒が、三人仲良くキッチンで押し合いへし合い喧嘩、もとい料理をしている。その珍しい光景に、軋峰は少しだけ微笑む。
「海!味噌汁味しねーよっ!!」
「紅の卵焼きだって、真っ黒じゃないですか!!それに、これ辛いですっ!!」
「どっちも、まずい。ゴミ。」
「「玄っ!!」」
「ご飯、炊けてる。」
「泡が零れてんぞ。」
「むしろ、壊れてませんか?炊飯器。」
聞いているのは面白いが、本格的に喧嘩になる前にと軋峰はキッチンへ向かう。
「「「ますたー!!」」」
「こりゃ・・・酷いな。」
流しに散乱するゴミに、煙を上げるフライパン。それから、泡を吐き出している炊飯器。
「えーっと・・・飯、作ろうとしたのか。」
怒られると思っているのだろう。三人は黙ったまま軋峰の質問に肯く。あいらこちらと散っている視線は、まるで悪戯が見つかった子供だ。
「・・・まぁ、なんだ。ありがとうな。」
結果はどうであれ、この三人が頑張ったのはキッチンを見れば解る。軋峰は、片付けのことを忘れた振りして悲しい結果になった卵焼き、味噌汁、ご飯を見つめる。
まずは、真っ黒で何か分からない玉子焼き。一口放り込めば、刺激的な味。むしろ、味なんてなくて痛みしか感じない。それから、味噌汁を一口。こちらは、味噌の直接的な味と一緒に、生煮えの玉ねぎが涙腺を刺激する。最後に、泡を吐き出すご飯は後味の悪い石鹸の味。
これらを料理と呼ぶのは、ちょっと無理があると軋峰は納得する。
「マスターっ!!吐き出してください!!癌になりますよっ!!」
「そ、そうだ!!んなもん食ったら、死ぬ!!」
「ますたー、死ぬなら一緒。」
慌てふためく海と紅、玄は泣きそうな顔でアイスピックを取り出す。予想通りの反応に、軋峰は笑って大丈夫だと告げてやる。取り合えず、玄のアイスピックは取り上げた。
「三人とも、頑張ったな。今度は一緒に、昼飯作ろう。」
まぁ放置していた自分も悪いのだ。そう思って、軋峰は怒るのを止める。甘いといわれようが、嬉しかったのは事実なのだし。



作品名:お昼ご飯を作ろう!! 作家名:雪都