二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

柳蓮二、家出をする。

INDEX|1ページ/1ページ|

 


「帰る場所がない」
大雨の中傘もささずにきたのかずぶ濡れの柳は真田の家を尋ねた。真田は玄関をあけた瞬間一瞬驚きながらその場で行動を止めるわけでもなく兎に角柳をあげ玄関をしめる。
「そこにいろ」
そう言ってスタスタと何処かへいってしまう真田の後ろ姿にこんな時間に押し掛けて非常識だったな、と反省する柳は暫く自分の靴を見つめるだけだった。
時刻は8時を回っている、丁度夕飯を終えて片付けをしていた所だったのだろう。廊下の奥のリビングから水の音がした。
「ほら、体をふけ。それと風呂も沸いているからそのまま入ってしまえ。場所は分かるだろう?」
「あ、ありがとう。」
ふわっとしたタオルが柳の頭の上に載せられる。ふっと視線を靴からそらし真田を見ようとするがタオルが遮って真田の表情は見えなかった。
柳は真田の家に何度か伺った事も勿論泊まった事もあったから、タオルを受け取りびしょびしょの体を軽くふいてそのまま風呂場に向かった。
真田はいそいそと母親の名を呼びご飯。と言った。さっき食べたわけではないのか、そう思いながら風呂場のドアをしめる柳。


「弦一郎、お風呂…ありがとう」柳は風呂からあがり静かに出て真田の部屋へ向かうと何をするわけでもなく座っている真田に声をかけた。
「気にするな、飯は食ったのか?」
「…食べてない」
「解った。持ってくるから待っていろ。」
「申し訳ない」
「謝るな。」
さっきお母さんに言っていたのはこの為か、優しい。優しいから、余計申し訳ないのだ。
柳はまだ生乾きの髪の毛をタオルでふきつつ部屋のすみに座りこんだ。
弦一郎の家の匂い、畳と木の匂いがする。柳は目を瞑ってさっきまでざわついていた気持ちを落ち着かせる。
「寝るか?」
「いや…ただちょっと。今ほっとしただけだ」
「そうか、飯はここに置いておくから。好きに食べればいい」
「何から何まで、本当にす」
「いい。気にするなと言っただろ」
真田は柳が謝った事に機嫌を損ねたのか乱暴に布団をしくと横になった。寝るのか?と柳が訪ねるが返事はない。
折角出して貰った夕食を食べながら柳は落ちていく気分を噛み砕いて飲み干したい気分になった。
自分の為につけられたままの電気に用意された食事。暖かい風呂に感極まって泣いてしまいそうだった。しっかり夕食を戴いたあと柳はそっと部屋から出ようとする。
「帰るのか?」
「ああ、世話をかけた」
泣きそうな顔を見られまいと下を向きながら立ち上がろうとする柳の腕を真田は掴む。
「お前の気が済むまでここにいたらいい。」
「弦一郎…っ」
まっすぐ自分を見詰める真田に柳は耐えていた気持ちを抑えきれずみっともなく布団から腕を伸ばす真田に飛び付いた。
「よしよし」
「……」
ぽんぽんと背中をたたく真田は真剣そのものなのだろう。
柳が泣き付くのを驚きもせず落ち着いて子供をあやすようにする。そのまま寝てしまえ、と言わんばかりの真田の体温が心地好く、柳はそのまま眠りについた。



次の日の朝、真田に抱えられるようにして眠っていた自分が恥ずかしくて真田が起きるまで眠ったフリを続けた柳だった。




END
20110202
作品名:柳蓮二、家出をする。 作家名:Rg