夕闇とさよならのあいだ
何度違う朝を迎えても
私は同じ星を見て
同じ恋に落ちる
「おそらく君には見えていないだろうけれど」
「時に星とは月よりも輝くものであると知っているだろうか」
「月が空に無い頃だ」
「新月の静かすぎる闇夜をそれらはぼんやりと照らしている」
「今日がまさにその夜だが」
「さて、幾ばくの君という星がこの空に浮かんでいるのか」
「瞳を開く事が無くなった君にはなんとも無意味な戯言であろうけれど」
「何度この空に還れば君は正解を導くのだろうな」
「何度この指を鳴らせば君は」
「君は」
「イーノック」
「何度君の死を目の当たりにしていれば」
「私は」
「わたしは」
「君のその身に私を刻みつけておけない」
「君は何度も何度も」
「私の前でその瞼を閉じて」
「神の名のもとに蘇ってしまうから」
「何も知らないままの君は」
「また純白の明日を私に愛されるのだ」
「イーノック」
「星が消えてしまいそうなのは」
「君の側で月が光り輝いているからだ」
「君に」
「私が映らないのは」
「君の心に神が住まうからだ」
「私の」
「君が美しいと褒めた羽根が純白で無くなるのは」
「私が君の昨日を漆黒に染めるからだ」
「イーノック」
「君に祝福を」
「愛と言う名の大罪にこの身が朽ち果てるとき」
「灰になった私を想って君が泣かないように」
「あの星が君を照らしますように」
作品名:夕闇とさよならのあいだ 作家名:autumn