かくれんぼ
もーいいかい?
まーだだよ。
静雄は何事に対しても真っ直ぐで、怒りが強ければ悲しみも強くて、嬉しければ喜びと共に楽しくなる。
子供である分、そして特殊な分、静雄の感情は彼自身が戸惑い苦しむほど強かった。
今日も怒りに任せて、人を殴って物を壊して、最後には畏怖の目が静雄の心を傷付けた。
もうやだ、どうしておればっか、こんな、
ぼろぼろと落ちる涙を必死で拭いながら、静雄は小さく小さく縮こまる。
近所にある神社の軒先が静雄の逃げ場所で隠れ場所だった。
寂れたそこは、お参りにくるひともろくに居らず、子供達にとっては怖い場所でもあったので、静雄は独りこうして泣くことが出来た。
幽も知らない静雄の逃げ場所。
けれど、たったひとりだけ、世界から身を隠そうとする泣き虫な子供を見つけてくれるひとがいた。
「静雄くん」
ふわりと降りてきた声に静雄は泣きぬれた顔そのままで見上げた。
ぼやけた視界に映ったのは、静雄の従兄で、そして静雄の力を受け入れて受け止めてくれる数少ない理解者だった。
彼は優しく微笑んで、細い腕を静雄に伸ばす。何のためらいもなく。
「みぃつけた」
少しだけ悪戯めいた顔で囁く彼に静雄は縮こまった身体を伸ばして、伸びる腕の中へとその身を投げ出した。
従兄は華奢な身体だけども静雄よりは大きかったので、よろめきつつも静雄を抱きとめる。
涙はまだ止まらない。けれど独りで泣いていた時とは違う何かが静雄の心を染めていく。
「みかど、」
「うん」
「みかど」
「・・・・大丈夫、ここに居るよ」
だからいっぱい泣いて、いっぱい吐きだして、そして明日は笑おうか。
帝人はそう言って、静雄の濡れた頬をひんやりとした指で優しく拭った。
静雄は何度も頷いて、彼の胸に顔を埋める。柔らかな体温が心地好くて、重い瞼をそっと閉じた。
もーいいかい?
もーいいよ。
(独り泣けるのは、見つけてくれるひとがいるから)