続 王のイタズラ
名前を呼ばれて、ドキリとする。
この前も
こんなことなかったっけ?
びくつきながら振り返ると
そこにいるのは紛れもなく、
スガタ。
‥………今日も笑顔が怖い………
今度は何もしてないぞ!と
思いながらも。
ある種の恐怖?観念が頭を過ぎる。
どうか・・・した?
と小さく返事をした、
と同時に
パシ、っと。
手をとられる。
余りの速さに、
残像すら見えないほど。
タクトはひっ!と息を飲んだ。
第六感が
猛烈な速さで負の方向に
計算式を働かせているのを感じる。
「今日も…来るよね?」
にこにこ笑いながら言う、スガタ。
何のことはない。
…武術の稽古のことなのに。
『なんでそんな……意味あり気に言うかなぁ……』
明らかに興味津々な周囲のことなど
全く眼中にないようだ。
きゃあきゃあと
クラスの女子が黄色い声をあげる。
「え、あ、……うん、行く予定です…」
「…来たくない?」
またも小さい返事に、満足できなかったのか
スガタが執拗に聞き返す。
にっこり。
笑っているが
目が光っているのは気のせい、
ではないハズだ。
だからーーーーその笑顔が!ねぇ!
声にならない叫び。
もはや
タクトは引き攣った笑いしか、浮かばない…。
スガタは
完全に尻込みしている
タクトの手をぐい、と引くと、
見せつけるかのように、肩を抱きこんだ。
キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!
という、
耳をつんざく絶叫が教室に響く。
タクトはサーーーーーーーっと一気に血の気が引く、が。
耳元で、囁くスガタの言葉。
「うちに来たら…食事も食べ放題、
手伝いをしてくれたらバイト代も出すよ?」
絶叫の中でも、何故かよく聞こえた
甘いささやき。
水を得た魚のように目の色を変えて。
「スガタ!僕……今日もスガタんち行く!!」
思わず、握り返した手。
輝く、大きな瞳。
見つめあう、二人。
の、構図が出来上がってしまったではないか!
…………っ!あああああ!!僕のバカーーーーーーーーーーーー!!
タクトは慌てて手を離そうとするけれど
ぎゅっと
その細さからは考えられない程に
力強く握られたスガタの手は
離れることはない。
「ちょ、スガ……手!手!」
洒落にならないくらい痛いんですけど!
「選択権をあげよう」
また、耳元でぼそりとスガタが
悪魔の囁き。
「ここで2度目のキスされるのと、
仲良くこのまま一緒に帰るの、どっちがいい?」
公認になれるなら、
僕はどっちでも構わないよ?
と。
ズガン!と頭を殴られたかのような衝撃を受け、
タクトはぐらり、めまいを起こし。
絶句で細い肩が…震えた。
「タクト、具合が悪いなら早く言ってくれなきゃ・・・」
そのままタクトは
スガタに肩を抱かれ
引きずられるように教室を後にすることになる。
今日もしてやってり、と
心中で笑う、スガタ。
………
タクト!君は今、
青春を謳歌している!
……のかもしれない……