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追いかけっこ

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鬼さんこちら、手の鳴る方へ。








俺には追いつきたい人がいる。追いかけて、追いついて、捕まえたい人が。
彼は俺の8つ上で、年も立場も心も俺にとって遥かに上の人だった。
どうしたら彼に追いつけるのか。あの細い白い手を捕まえられるのか。俺は笑っちゃうぐらい懸命に努力して勉強して、色々なことに首を伸ばしてやばいものだとわかっていても足を突っ込んでみて、結果怖い目に合って傷付いたりしても、これも彼を捕まえる為だと思えば全然苦じゃ無かった。
そんな俺を彼は困ったように笑って見ていたけれど、窘めたりはしなかった。
ただ、

「焦らなくてもいいんですよ」

とだけ何時も言ってくれた。
その言葉に俺は安堵し、そして悔しく思った。まだまだ子供だと思い知らされた。
だって、だってねぇ、帝人くん。ただでさえきみと俺は年が離れてるのに、悠長な時間を過ごして君を誰かに捕られちゃったらどうするの。
きみと俺だけの鬼ごっこに、いつどこの誰かが参加するやもしれないのに。もちろん俺は君だけを追いかけるけど、君を追いかけるのは俺一人だけとは限らないじゃないか。
俺は大人になりたいんだよ。君の隣に立てる大人に。そして出来るなら、君の前に立って、あらゆるものから護ってあげたいんだ。もちろん無償じゃないよ?俺が君を捕まえたら、君は俺と同じものにならなきゃいけない。俺と同じものを持たなきゃいけない。
つまりさ、俺を、好きにならなきゃいけないんだ。
それが、鬼に捕まった人間の宿命なんだよ。





「・・・それはそれは」
くすくすと鈴を鳴らすような声が臨也の頭に降り注ぐ。押し倒すように抱きついて、きっと重いだろうなとわかっていても臨也は帝人の上から降りなかった。むしろがっちりと身体に腕を回して、離れなかった。
「そんなルールがあるなんて、知りませんでした」
「知らなくて当たり前だよ。だって俺と帝人くん用のルールだし」
「専用ですか?」
「限定だよ」
冷たい指が頬を滑って、髪をさらりと撫ぜる。柔らかくゆっくりと撫ぜる仕草は昔からの彼の癖だ。子供扱いをされているといつも不満に思っていたけども、心地好さからその不満が唇から零れることはなかった。
「帝人くん」
「はい」
「―――みかどくん」
細い身体。小さい頃は大きく見えていたのに、今ではもう臨也のほうが身長は高くなっている。それでも、やっと、やっとなのだ。
あんなに切望した彼が、今この腕の中に居る。
紅と蒼が静かに交差した。


「つかまえた」


帝人は、愛おしむように慈しむように、そして艶やかに微笑んだ。


「つかまっちゃった」


何となく泣きたくなって抱きしめ返してくれた彼の腕の中でほんの少しだけ泣いた。













鬼さん、こちら手の鳴るほうへ。


(ああやっと捕まえた!!)
作品名:追いかけっこ 作家名:いの