UWAKI
ウワキなるものを沢田綱吉は考える。法律上のことも世間一般のことも置いておいてとりあえず己は、何をウワキだと思うのだろう。考えた結果、浮かぶのは結論ではなく、雲雀恭弥の背中だった。沢田は苦笑する。
ああ、この背中が脳裡に浮かぶ内は、例え雲雀が出会った人間全部と淫欲を貪ろうが、自分は身体を清くして待つのだろう。
2
「切って裂く」
ウワキしたらどうしますか、と訊いた沢田への雲雀の応答は、具体的な制裁だった。この場合、沢田と縁を切り、ついでにウワキ相手との仲を裂くという意味ではない。切るも裂くも沢田の下半身へ行われるダメージだ。その事をすべて承知の上で、沢田はにんまり笑った。
「苛烈ですねえ」
そう言うと雲雀は鼻で笑う。君に、そんな心積もりが?と。この態度、この余裕。どうやら沢田が己に愛想を尽かすことなど考えていない。自信をお持ちのようでなにより。沢田は満足する。だからこそ魅力的、だからこそ憎らしい。
でも、少しは刺激も欲しいでしょう?愛すべきエゴイスト、そのプライドを。やさしく揺すって。そう、ほんの少しだけ。
「セフレのオレでそのくらいなら、本命がウワキした時の応対は、さぞ」
雲雀は瞬間、虚を突かれたようで。沢田はやっぱり脈はあるのかなあと少し嬉しくなる。憂鬱になる。そして一切、振り払っておどける。
「怖や怖や」