いいのですよ
朝から昼を過ぎて夜。スケジュールが分単位で決まっていることなどよくあること。たまに大規模な(部下による破壊)活動が起これば全部予定が潰れるのだが、その日はそんな予定外が起きた日ではなかった。小競り合いが勃発するも、予定を白紙にする威力はなく、そう、普通に。普通に忙殺される日だった。
そんな日に、オレは利き腕右手にカッターを持っていた。安い、狙う場所を選ばない限り、使う相手が玄人でない限り、誰も殺せない工作用具。殺す?工作用具にそんな作用はない。ハサミでは不便なときに、そう厚紙とか切断する時にしか、使わない。のに。
なぜオレはカッターを左手首に当てているんだろう。
沢田綱吉は、異常にまどろんだ頭の中でゆっくり自分に問いかける。オレは死にたいのか?
NO
だから、ああ疲れているんだなと、納得した。
刺激を、ちんまい自分の脳が欲している。低下したバイオリズム。一気に上げるため、自分はカッターで自分を脅しているんだ生き残るために。別にカッターでなくても良かった。なかったら脛にセルフかかと落としをしただろうし、腹の皮をつまんで、ひねりあげただろう。それよりも、足の間を椅子の角にぶつける、想像、だけでも良かったかもしれない。うお、覚めた。リフレッシュ!
だから、そんな。
「…大丈夫です、よ」
後ろからがっちり、特に右手、もげるんじゃないかってくらい握らなくても。左手首の内側を、手の甲で覆うように、握らなくても、わずかに震えなくても、いいんですよ。マイ・ディア。
あなたと、あなたたちがいれば!