二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

鉄の棺 石の骸番外5~急がば回れ~

INDEX|1ページ/1ページ|

 
創造主・Z-oneよ。
 宣言する。ここに私は復活した!
――ほんの一部分だけ欠けちゃったけど。


 D-ホイールの改良に勤しみながら、ブルーノは今までのことをつらつらと思い返していた。
 WRGPがないと、とてもとても暇だ。大きな大会が催されているので、ネオドミノで普段毎日のように行われている決闘が、今は全部キャンセル状態なのだ。決闘番組も全てWRGP一色だったから、延期中の今は決闘一つも扱えない。
 遊星は、急に入った修理工の仕事に行ってしまった。今はブルーノ一人で寂しくパソコンに向かっている。

 思えば、イリアステルの見知らぬ人に目を付けられたのが始まりだった。
 「ブルーノ」も遊星を守る使命があるから、堂々とデュエルに応じようとした。
 あの日は恰好よく相手を倒して後腐れをなくそうと思っていたのだ。使命の障害は少ないに越したことはないのだから。
 それが、猫を庇って海に落ちて……この有様だ。
 ああ、でもあの時の猫が無事で、本当によかった。命は本当に大事なものだ。猫はとてもかわいいものだ。
 しかし、あの日、とばっちりを食らったデルタ・イーグルについては、正直申し訳なかった。あれから半年くらい海水漬けにしてしまっていたのだから。
 フジツボやイソギンチャクなんかくっついてなくて、本当によかった。
 本来なら、適当なチームに加入して、戦いの最中に恰好よくアクセルシンクロを遊星に伝えて……ついでに大会も腕試しとして楽しみたかったのに。

 それでも、「ブルーノ」の今の生活はとても楽しいものだった。
 こんな楽しい生活は、何故か久しぶりなような気がするのだ。大切な仲間たちがいて、楽しい我が家のあるこの生活が。
 しかも、居候先は「ブルーノ」にとってのアイドル、「不動遊星」の家だ。
 吹っ飛んでいた記憶が戻って、まずその事実に仰天したものだったが……。
 ファンにとって、アイドルの家に住まわせてもらえるなんて幸福そのものだ。何たる至福だ。
 できることなら、今ここで大々的な遊星コールを実施したいところだ。

「……でも、この気持ち、誰に伝えたらいいのかな……?」
 このことを誰かさんに話したら、多分その誰かさんは心底悔しがるだろう。そして、酷く羨ましがるに違いない。
 「ブルーノ」としては、してやったりといった気持ちになる。今までその人にファン度で全く勝てなかったから、余計に。
――しかし、その気持ちを誰に伝えたら一番いいのだろうか?
 遊星はこの家の住人だから当たり前だし、ジャックやクロウも同じだから意味はない。「ふーん、それで?」の一言で終わりにされそうだ。
 アキや龍亞龍可も遊星の仲間だから、別に羨ましがる必要もない。遊星と同居していることはともかくとして。
 それなら、この世界にいるどこかの誰かなのだろうか?
 この世には絶対いる気がする。しかし躍起になって、地球全体をくまなく探しても見つからないような気もする。自分と一緒に、あれだけ熱狂できる人間は。
 多分その人は、自分の大切な仲間でもあると思う。

 とにかく今は己の使命を果たそう。
 遊星を守り、イリアステルの野望を阻止する。
 そうしたら、「ブルーノ」が探している誰かさんがひょっこり顔を出してきそうな気がするのだ。
 それまでもう少し、遊星たちと一緒にがんばってみよう。


 ブルーノは、未だ顔も思い出せない「類友」に思いをはせていた。


(END)


2011/3/1