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メロウ

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どうやら俺様は鼻がいいらしい。
ウエットスーツの上半身を脱いで、胸元や腕からむわぁっと鼻に届くこのいつものにおい。
ウエットスーツのゴムっぽい匂いはほんの少し、あとは、ガッツリと潮の匂い。
そーいや、頬をつーっと伝った汗だか海の水だかわかんねーものを、舌先でちょろっと舐める。



しょっぱい。



アイツん汗も、こんな味すんのか?













「どっけどけどけどけぇ~~~~~い!!!!!!!」
走って走って走りまくる。
空気が全身を通り過ぎてるんじゃねぇかってくらい、これくらいの走りは余裕だぜぃ!

「いっけぇぇぇぇ成宮ぁぁぁぁ!!!!」

「成宮くん~~!!がんばって~~~!!!」

「おう!!!まっかせろーーーーいっ!!!!」
右手で掴んだボールを力任せに、…じゃねぇ、「力いっぱい」投げる。

ピピーーーーーッ。

試合終了。
へっ!どんなんもんでぃっ!この俺様、成宮天十郎様、にかかればこんな試合―――

「ツチノコさいさいだぜっ!!」

「お茶の子、でしょっ!」

ばっしん!!

「いってぇぇぇ!!!!!!」

あー、また来やがった、うるせぇちっけぇ担任。
ほしゅーほしゅーうるせぇの。

体育館のひんやりした床の上で大の字に寝っ転がると、腰に手を当てて俺様を上から見てるコイツ。
逆光?つーのか?
体育館の天窓からの光で表情が分かりにくいけどよぉ、ま、あんま良い表情はしてねぇってこったな。

むくりと起き上がってやる。

「まずは、よく頑張りました、天十郎君。
廃部危機にある、スウェーデンリレーポートボール部を見事勝利に導いたのは流石です。」

「ちっげぇよ、ヴァイキングリレーポートボール部だっての。」

「とにかく!助っ人は大いに結構。
た・だ・ね…。」

あーくるぞくるぞ。

「補習を無断キャンセルするときには事前に連絡を、と何度も!!
違う日に予定を組み直しはちゃんとするから連絡はちゃんとしようね、って約束したでしょう?!」

あーでたでた。かーちゃんみたいなガミガミ攻撃。

コイツはどれだけ俺様が無視しても逃げ出しても追いかけてくる。
ちっせぇ頃、とうちゃんとかかあちゃんに読んでもらった絵本の「やまんば」みてぇって思って、

でも、息をぜぇはぁしながら、眉間にめちゃくちゃ深い皺とかシャツが汗びっしょりになりながらも追いかけてくる姿見てたら、まるで「なんかと戦ってるやつ」みてぇって思って、

そのうち泣きそうな顔になりながらも追いかけてくる姿を見てたら、「何かにすがりついてる」「子ども」みてぇって思って。

俺様走るのやめた。
やめたんだ。

「おい、アホ天、また阿呆なことをして怒られているのか。」
「千!」
幼なじみ、…兼、俺様の従者の千がやってくる。
面倒そうに腕を組みながら、のっそのっそとこっちに向かって。

タッパのせいか、見た目のせいか、ただ歩いてくるだけで人の目に留まる千。
周りの女子が「不破君、来た」とか言ってきゃぁきゃぁ言ってるのにも、全く無視。
生まれた瞬間から一緒にいる俺様ですら時々思う。
「コイツには女の声が聞えねぇのかよ」と。

「千聖くん!」
くるんと後ろを振り向くちっけぇの。
髪の毛とか、スカートとか、一瞬、あれ、なんつーんだっけ?ゆっくりみえるやつ。
すろーもーしょん…か?
目がそんな錯覚を起こしやがる。
俺様、目がいいのは取り柄だと思ってたけどよぉ、なんだか、この時ばかりは流石に……。

勝った気分の良さと、さっきの走りで体のおくからワクワクっつーか、ドンドンつーか、なんか気分いいのが出てんのがせっかく気持ちいのに、すぅっと体からひくのが分かった。

「おい!」

この距離が更に短くならないように、取られないように腕を掴む。
俺様、耳もいいんだよなぁ。
ぱしっ、と乾いた音が体育館中に鳴りやがった。(ような気がした)

くるくる変わる目ん玉の中の表情。

「なんだっけ?えーと……。」

流石に俺様も言葉が続かねぇと思った。

けど、これが補習の効果ってやつか?

「ばいく…バイク…!!!!
前の補習でやったとかいう、バイク?だかあのあたりがよくわかんねぇんだけど!!!」

「俳句、だ、アホ天」

千が言葉を挟む。

面倒そうに俺様の「言い間違い」を訂正する千は、チラリとアイツの顔を見て、「やれやれ、こんな阿呆のお守は大変だな」とでも言いたげな表情をする。
それでもアイツは、俺様が自分から質問したのが余程嬉しいのか、ぱん、と手を打って嬉しそうにこう言いやがるんだ。

「じゃ、これから1時間程度補習しよっか?
千聖くん、天十郎君のお家に連絡して、帰宅が遅くなることとを伝えてくれるかな?」

「あぁ、分かった。じゃ、もう今日は神輿部隊は帰らせて、天が変えることに車を呼ぶように手配しておく」

「そうしてくれる?ありがとね。」
天十郎君が自分から『教えて』なんて言うことなんて滅多にないから、なんて千に向かって言ってる声が遠くから聞える。

いらいらする。
つーかもやもやする。
いらいらだかもやもやだかが、蜘蛛が糸を吐き出すみたいにしゅしゅしゅーってもあもあもあぁ~ってして、俺様の胸に巣くう。






いつからだったんだっけか、こうなったのは。

アイツは元々千のオンナだったわけだ。

産まれたときから四六時中俺様のそばにいて、
俺様を守る事が使命、っつー、俺様達には生まれたときから普通だと思える関係。その実、他人からみたらありえねぇ関係。

似てるところなんてあんまねーけど、根本的なモン…
これだ!って思ったモンにはやたら真っ直ぐなところとか、俺達すっげぇ似てるって思ってたし、

繋がってる根っこっつーのは変わらないって思ってた。

だからアイツがアイツと付き合い始めたって聞いた時もすっげぇ嬉しかったし、なにをおいてもアイツの幸せを優先してやりたかった。
「成宮と不破」なんて関係ねぇ、これは、「千聖と俺様」、「成宮天十郎」の間のことだ、って。

けど、アイツの嬉しそうな顔を見るたび、
ちょっとのことが気にかかってへこんでる姿を見るたび、
今めちゃくちゃドキドキしてる、
ときめいちまってる、
何をおいても、今すぐアイツとひっつきてぇ、キスしてぇ、
なんて顔を見るたび

熱く潤んだ瞳を向けられてるアイツを見るたび、また、それを向けているアイツを見るたび








どうしようもない気持ちになんだ。







アイツのことを一番幸せにしてやりてぇってのは俺様だ、って。








アイツは渡さねぇ。

奪ってやる。

奪ってみろ。

奪い返してみろ。








とにかく一人占めにしてやりてぇんだ。








なぁ、こんな俺様








変か?
作品名:メロウ 作家名:みろ