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鉄の棺 石の骸番外6~無理が通れば道理が引っ込む~

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アーククレイドル、例の白い空間。
 金髪の女と白いフライング・ホイールの間に、緊迫した空気が流れている。
「……」
「……」
 Z-oneとシェリーは、先ほどから睨み合いと言った体で、お互いの目から一回も目を逸らそうとしてもできていない。
「……」
 もう、かれこれ三十分も経ったというのに、一歩もそこから動けない。
「……あの」
「……何」
 Z-oneが恐る恐る聞いてみても、シェリーはぶっきらぼうにそれに答えるだけだ。更に言い募りたくても、彼女の雰囲気が何か怖くてこちらからは言い出しにくい。
 何故か彼女は、わざわざ仮面の隙間に目を凝らしている。どうやら、Z-oneの中の人をもっとはっきり見てみたいらしい。
 Z-oneを見ては考え込み、また見ては訝しげに顎に手をかけている。
「どうしたの、ですか、シェリー……? 私の顔、そんなにおかしいですか?」
「……なさい」
「……えっ?」
 ぼそっと言われた言葉を聞きとれず、Z-oneはもう一度シェリーに聞き返した。すると、彼女はがばりっと顔を挙げて、
「あー、もう! まどろっこしい!」
 だんだんだん! とシェリーは足音も荒くZ-oneに近づき、そして指をびしっとZ-oneに向けてこう言い放った。
「――ご託はいい。顔を見せなさい」
「……ええー」
 
――正体バレは、特撮の華だ。儂にも覚えがある。

 友の分身体であるホセの声が、今幻聴になって聞こえた気がする。……じゃなくて!
「だ、ダメですよ!」
 仮面を庇うように、Z-oneはホイールごと後ろについと下がった。シェリーが食ってかかって来る。
「どうして!」
「最終決戦までラスボスの正体バレは取っておくものですよ!? それまでに、一体今から何話あると思ってるのですか!?」
「知らないわよそんなの」
「知ってくださいよ! あれですよ、雰囲気というものがあるでしょう!? ラスボスの!」
「知ったこっちゃないわよ! あれでしょ、分かってるのよ、どうせ私の知ってる人でしょう!? 私はちゃーんとお見通しよ!」
 こうなると、君の予想外なんですよ私の正体、とは到底言えない。
 シェリーはZ-oneの仮面を剥ぎ取ろうと、びょいんびょいんと高くジャンプして、仮面に手を伸ばした。手を伸ばすたびに、何度も彼女の指が仮面の穴にかかりそうになっている。
 まずい。ここで正体バレなんかしたら、仮にも運命の神の名のステータスがガタ落ちだ。
「ダメですってば!」
 そのたびに、ひょいんひょいんとフライング・ホイールが上下に飛び上がる。シェリーもそれを必死に追った。すると、
「あ……!」
「……!」

 ごしゅっと鈍い音が、辺りに響き渡った。

 Z-oneが高く飛び上がりすぎて、白い天井をぶち抜いて突き刺さってしまったのだ。相当な衝撃が、Z-oneの頭部をしこたま襲った。
「……っ、……っ!」
 衝撃と激痛で、もう声も出せない。
 フライング・ホイールは横倒しになって床にべちゃっと落ち、Z-oneの視界も横になる。
 仮面に付属していたヘルメットのおかげで、Z-oneの頭は割れなくて済んだものの、ぶつけた頭が相当痛い。
 よくぞ悲鳴を上げなかったものだと、Z-oneは自分の持ち合わせた忍耐心に感謝していた。
……これで、痛めた頭を押さえられる腕があったら最高なのだが。
 この惨状を目の当たりにしたシェリーが、恐る恐るZ-oneに話しかけてくる。
「……え、えーと、Z-one」
「……は、い……」
「ご、ごめんなさい……頭、大丈夫……?」
「……大丈夫です。ええ、……私は大丈夫ですよ、本当に……」
「Z-one?」
 Z-oneは、横倒しのフライング・ホイールをやっとのことで起こすと、ふらふらと漂いながら、白い空間を出て行った。
「……頭、大丈夫なのかしら?」
 仮面の隙間からちらりと見えた青い目が、何だか涙目になっていたように見える。


 その後。
「Z-one。――ねえ、機嫌、直さない?」
「……」
 シェリーがZ-oneに近づこうとすると、近づいただけZ-oneのフライング・ホイールはつーいと離れてしまう。
 それも、きっかり半径三メートル分だけ。
「Z-one」
 つーい。
「Z-oneっ」
「ダメです。――当分の間、半径三メートル以内での私への接近を禁止します。また君に仮面を剥ぎ取られそうになったら、敵いません」
「だから、ごめんって言ってるじゃない」
 つーい。
「案外根に持つタイプなのねあなた……」
 その後、Z-oneの機嫌が直るのには三日を要したという。


(END)


2011/3/1