手紙的5題
お元気ですか(200字)
何だって、幽が自分のことに無頓着なのが、いつも一番の懸念要素だ。昔からそうだった。感覚が鈍いばかりに傷や軽い骨折にも気付かないし、寒さ暑さに敏感になれずにいつの間にか風邪をひいていることだってある。テレビや広告で見る、首もとの開いたあんな服ばかり着ていたら寒いだろうに。あいつをそうさせるより、早く仕事を終わらせて、マフラーの一つでも買って送ってやりたい。上司との待ち合わせ時間まであと3分。
寒くなってきました(197字)
「幽です。特に用は無いんだけど、時間があったので電話してみた。前の映画は池袋が舞台だったけど、今撮ってるやつは違うところだから、ちょっと難儀。元気? そういえばこの間、牛乳切らした時に、近くのコンビニ行ったら、いつものと違うのしか置いてなくて、違うの買ったら、なんか違った。いつものが一番美味しい。兄貴は、ちゃんと飲んでる? くれぐれも切らさないように。あ、そうだ」あ、電池、切れた。
そういえば(189字)
「新しい映画観た。すげえ良かった。終わりの方でお前が相手役に言った台詞、あれが。『離れたくないから、離さない。それだけだよ』だっけか、あれは、マジで凄かった。次はドラマだっけか、頑張れよ。仕事も大事だが、くれぐれもちゃんと防寒しろよ。これ送っとく。最近新しいやつを買ったばっかとかだったら、悪いが勘弁してやってくれ。あと、最近子猫が生まれた。」しまった、もう書くスペースがない。
子猫が生まれました(189字)
「子猫?」「ああ、事務所の近くに野良猫がいてよ、この間子供を連れてたんだよ。ありゃ可愛かったな」「ふうん」「お前こそ、『あ、そうだ』何だよ?」「ああ、撮影してたドラマ、クランクアップして、休みが取れて」「おお、良かったな! なら、休みの間うちに来いよ。早く仕事終わらせて帰るからよ、一緒に飲もうぜ」「牛乳を?」「あー、それもそうだけど、酒な。あークソ、さみいな」「はい」「え、コレ」「お返し。防寒用」
それでは、この辺で。(194字)