犬プレイ
前提:いろいろあったよ。
裸のままタオルケットにくるまり帝人は部屋の隅で動かない。
臨也はただ含み笑いでそれを見つめる。
「ねぇ、帝人君」
声をかけてみるも視線は下げられたまま臨也には向かない。
つまらないと思いながらも臨也は「ねぇ」とまた口にする。
「どうして喋らないの? 俺があいつらの仲間で君に酷いことすると思ってる? 寝てないよね? 風呂とかトイレは俺がしてあげるから構わないけど」
臨也の発言に帝人の頭がわずかに動く。
「……人間扱いされたい?」
どこか嘲りが含まれた臨也の声にも帝人は答えない。
頑なに視線を上げない。
「ねぇ、何がそんなに嫌だったの? 爪を一枚一枚丁寧に剥がされたこと? 指の関節を逆に曲げられていったこと? 肩の関節を外されたこと? そうされながら犯されたこと? 幸せな友達の姿を見せられながら延々とそういうことをされ続けたこと?」
臨也は首を傾げる。
「ん、やっとこっち見た。あはは『わからないんですか』って言いたそうだね」
顔を上げた帝人に楽しそうに臨也は笑う。
「わからないよ。君の気持ちなんか分からない。だって俺はそんな状況になったことはないしなる気もない。想像なんかする気もない。じゃあどうして聞くのかって? 帝人君が聞かれたくなさそうだから。だから話してよ」
わざとらしく足音を立てて帝人に近づく。
視線の高さを合わせるようにしゃがみ込み臨也は目を細める。
「目を閉じて耳を塞いでいれば何もかもが消えるとでも思っているのかい?」
帝人の表情は変わらない。
臨也は歪な形に固まってしまった指先に触れる。
「現実は変わらない。穢されて壊された君はこれから生き続ける」
冷たい瞳を受け入れながら臨也は赤黒く染まっている指を口に含む。帝人は何も言わない。
「君だって分かってるだろ。俺は君を助けてあげた。涙を浮かべて感謝されてもいいぐらいだ。それとも首を絞められながら電撃を受けてるのが好きだった?」
悪意を隠さない言葉は帝人の心に届かない。
視線はまた反らされて臨也は少し考えて「ごめん、ごめん」と軽すぎる謝罪。
「本当は俺も早く助けたかったんだ。あぁ信じてくれないか……」
唾液まみれにした帝人の指をまだしゃぶりながら「んっ、だってさぁ。こういうことはそうそうないだろう」
あっては困るに決まっている。
男相手に強姦されるのも並ではないのに帝人がされた行為はその程度ではない。
「人が何処まで残酷で無慈悲で愚かなのか味わった帝人君はその後にどうするのかな? もちろん自殺だけはさせるつもりないから」
キャンディを舐めるように帝人の指を舌で弄る。
「あぁそんな『死ね、外道』みたいな瞳で見られるとちょっと興奮しちゃうじゃないか」
臨也はあくまでも楽しそうに嬉しそうに帝人に触れる。
「何か答えてくれてもいいんじゃない?」
頬を撫でる臨也に不快そうに帝人は眉を寄せる。
迫ってくる唇を避けることもないが硬質な雰囲気は受け入れているはずがない。
「ねぇ、ねぇ。何か言ってよ」
幼い子供のような無邪気さで臨也はねだる。
帝人は目を細めはじめて口を動かした。
「わんっ」
帝人は言葉を喋らない。男たちによる徹底した調教の結果かといえばどうなのだろう。
(俺の信用がないせいかな)
臨也は疑問に思いながら「よくできました」と帝人の頭を撫でた。