二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

安らかな白を、あかい頬で喜ぶあなた

INDEX|1ページ/1ページ|

 


毎月墓前には花を供えにいく。
目が回るほど忙しい(自分にとっては、)仕事の時間の合間を縫って、時期や季節折々の花をたずさえて会いにいく。
その色とりどりは永遠に閉じられた瞳じゃもう見れないものだ。
死者には花を、なんて残された者の気休めだとわかっていたけど(それが礼儀だと人は言うが、実際死んでしまえばなにもかもが無価値だ)結局、それでも姉に会いにいくのに手ぶらじゃ来れなくていわば措置のように花を持った。
冷たい墓標に色を添えるのをやめられない。
穏やかに眠る姉上には美しい花が似合う。

胸にある花束を潰さないように抱えた。
迷いなく選んだそれは白一色にまとめられている。
花屋の売り子が当り前のように選び取った色を「白で」と断ってそうしたのだ。
ちょうど近くにある行事ごとのせいか、赤ばかりが目につく店先で売り子は一瞬戸惑ったようだが、何も言わず言う通りに見繕ってくれた。
姉上にはなるべく淡い色彩を贈りたいと思うのは自分のエゴだ。
黄色や桃色、水色や白、なるべくささやかでかわいらしい花がふさわしいと思う。
清純で美しく、儚い―――そういう風に在る人だった。
持ち寄る花束は、いつも控えめに寄り添ってあった自分の中の姉上の象徴そのものだった。
抱えた白の美しさ、優しさ。
この先で待つ姉上もきっと、この花束を喜んでくれるだろうと思うと、心持ち足取りも軽くなった。
頬をばら色に染めておっとりと笑うはずだ、生きてさえいれば。
それを思うと、この行為もいつかしなびれるはずの花も、少しだけ報われる気がする。
自分を慰める為だったとしても、姉上はそれすらきっと赦しくれる。
そういう人だったから。

五月の空が優しい。
その透けるような光の中、なにより優しい色の花束をあなたへ向けるように、ゆっくりと会いにいく。







澄んだ青空の下、姉上が眠る場所に二色のカーネーションが並ぶ。
先着の赤に、まっさらな白。
風が教えるのは暖かく爽やかな春の空気と、ほのかな煙の残り香。
それに思わず笑ったら、いないはずの姉上も一緒に笑ってくれたような気がしたから、良かった。

(あんたもサボりかよ、土方コノヤロー)



赤い頬で喜ぶあなたへ
白い頬で眠るあなたへ