もみもみユリフレ
「ここか?」
「ん、気持ち、いい…」
「……」
「いたっ…ちょっとユーリ、もう少し優しく…」
「あ、悪ぃ」
腰が痛い、とフレンが訴えてきたのは遅い朝飯と早めの昼飯を兼ねた食事を終えた後だった。
今日が休みだからと昨夜羽目を外しすぎたのは確かで、いやでも最後はフレンももっとってねだってきたじゃねぇかあれは可愛かったな、とユーリが真顔でピンクな回想をしていたらすごい形相でフレンに睨まれていた。そこで空気を読んだユーリはフレンの身体を労わるべく、純粋に少しでも痛みが和らげばいいと思って始めたマッサージのはずだったのだが。フレンの口から漏れる声が最中のそれを彷彿とさせて、ユーリは思わず力を込めてしまった。
「…お前、その声なんとかなんねぇの」
「は?」
「真昼間からエロイ声上げんなつってんの」
「え、えろ…って、君は何を言って!」
慌ててこちらを振り仰ぐフレンの腰をほどよい加減で揉んでやると、やはりまた艶っぽい声を上げてふにゃりとうつ伏せてしまう。その反応にムラムラする衝動をなんとか自制したユーリは、溜息をついてマッサージは止めだとフレンの身体から手を離す。すると、離れかけていた左の手首をしっかり掴まれてしまった。それを支えにもそりと起き上がったフレンは、こちらを恨みがましく睨んできた。
「それじゃあ、君はどうなんだ」
「あ?」
「君も気持ち良かったら、変な声が出るんじゃないのか」
「どうだかなぁ」
適当にはぐらかそうと思ったら、横になってくれ、と今しがたフレンが寝ていた場所を指差された。何をむきになっているのか。しかしむくれたフレンに従わないと彼のイライラゲージが増えて後が怖い。少し付き合うか、と諦めたユーリは、手近な座布団を二つ折りにするとそれを枕にうつ伏せに寝転がる。
「つっても、俺別に腰は痛くないから…肩頼むわ」
ちゃっかり指定も忘れなかった。
「あーそこそこ」
「……」
「はぁーきもちいい…フレン、整体師もいけんじゃねぇの」
「……」
フレンのマッサージに素直な感想を述べながら白衣フレン妄想してみたら、意外と似合っていて口元が緩む。フレンに顔が見られなくて良かったとこっそり息を付いていると、不意にフレンの手の動きが止まった。まさか脳内の妄想がばれたのか、と内心焦りながら冷静さを装ってフレンを振り向いたら、何故か微妙な視線を寄こされた。
「どうした?」
「いや…そうえいば、君、座るときもどっこいしょ、とか言ってるなって思って」
「は?」
いきなり何を言い出すのか、と戸惑いの視線を送れば、しみじみとした顔でフレンはほほ笑んだ。
「なんだかもうおじさんだね、ユーリ」
「……」
その言葉に絶句したユーリは、お前も同い年だろ、というツッコミも出来なかった。