お呪いの代償
体が白い。心が白い。なら、背には純白の翼が生えているかもしれない。
そう思っていた彼に見えた変化。
いつものようにやってきた彼の手に握られていたもの。
それを指差して彼に尋ねる。
「それはなあに?」
首を傾げて彼にそう問いかけた。
「この花のことかい?」
そう言って自分が疑問を持ったものを手を振って揺らす。
彼がそうする度に私の視線はそれを追って忙しくなった。
「これはね、黒百合っていう花なんだよ」
「その黒いの、お花なのね」
「色鮮やかなものばかりが花じゃない。この黒の色を全身に纏ったものだって立派な花だ」
へえ…と手を伸ばして触れようとしたら、彼はそれを後ろに隠してしまった。
「触ってはいけないよ、サカナちゃん」
「どうして?」
「これは触れてはいけない花なんだ」
そうなの?触っちゃいけない花なの?
でも、触っちゃいけないのに、あなたは触ってる。
どうしてなの?
「花には意味がある。花言葉といってね、この花には呪いの意味があるんだよ」
「呪い?」
「そう、とても恐ろしい呪いだ」
そうなんだ。呪い、それは怖いわ。
じゃあその花に触ると呪われちゃうのね。
だったら、あなたは?
「呪われちゃったの?」
「いいや違うよ。俺が呪いをかけているんだ」
「呪い?」
「おまじない、とも言うけどね」
おまじない?呪いはおなじないなの?
呪いって、おなじないって、どんなの?
疑問に首を横に傾けると彼に頭を撫でられた。
「このおまじないはね、誰にも知られてはいけないんだよ」
そう言って私に笑いかけた彼の笑顔の裏。
なにか黒いものが蠢いたのを私は見た。
【お呪いの代償】