二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

太陽の所有権

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
大地を蹴ったのは、跳ぶためじゃない。




―――――堕とすためだ。





「見つけたぞ!・・円堂!!!」

瓦礫と舞い上がる砂塵を一面に浴びたグラウンドは、かつての面影もなく真っ黒な灰色へとその姿を変貌させていた。出てくる前は青空であった空も、ここへと走ってくるまでに異質な暗闇へと変わり果てている。埃は風に煽られて地へと落ち、また風に吹かれて空へと蹴りあげられる。再び地へ落とされることを知りながら、土埃は空へと舞い上げられ続けるのだ。

「これでいったいいくつ目だ!?いい加減に目を覚ませ!!」

心地よい静寂とうめき声の支配する世界を引き裂いたのは、浅黒い肌を汗に滲ませ息も絶え絶えに叫ぶ染岡だった。



―――――――煩いなぁ。



がさり、と崩れ落ちた校舎を踏みしめながら呟いた人物に、染岡は苦虫を噛み潰したように顔を歪ませた。
「・・吹雪・・!!」

「今ね。キャプテンが、ちょうど技を決めたところだったんだよ。すっごい格好よかったんだから。染岡君、少し来るのが遅かったね」

残念だね、と笑う吹雪に、染岡は背中に悪寒を感じて思わず後ろに後退する。
「な・・にが残念だよ・・!また学校をこんなにしやがって・・ッ!!」
「こんなに?」
以前とまったく変わりない笑顔を貼りつけた吹雪は、嬉しそうに片手を身にまとうマントからのぞかせると、崩れた校舎をその手に掴むように、広げ、そしてあっけなくその手を握り潰した。
「こんな風に?」


簡単だよね


言葉は空気を振動させることなく、吹雪の口を撫でただけだった。そしてその口角が可愛らしく歪むのを、染岡は信じられない思いで見つめる。何度目にし、そして何度見ても慣れることはないその表情に、目を背けたくなる衝動を染岡は決死の思いでその場に踏みとどまる。

「染岡さん・・!!」
「これは・・!?」
「やっと追いついたッス!!」

背中から聞こえた声に、染岡は振り返った。

「お前ら・・!遅いぞ!!」

そこにいたのは染岡よりも若干遅れてここへと着いた懐かしい雷門イレブンの面々であった。皆、荒れ果てた学校の様子に息を飲み、目の前にいる吹雪にその身を固く、身構える。



「懲りない奴らだ」



笑みを携えた吹雪とは対照的に、その男は闇に沈んだ濁った瞳をゆっくりと彼らに向けてきた。砂塵が彼を取り囲み、こちらへと歩いてくる間に捲きあげられた風が威圧となってイレブン達を襲う。ただ歩いてくるだけなのに立っているのが苦痛に変わるほどの威厳を放った彼に、かつての面影は微塵もなかった。

「キャプテン」

現れた男も見て、今までにないほど破顔した吹雪が言った。

それは以前彼らが太陽のように慕った男であった筈なのに。
今彼を纏うのは希望と光を地へと堕とした闇と絶望だった。
皮肉にも、砂塵に巻き上げられた漆黒のマントは深海へ沈みゆく堕天使に相応しかった。
両には同じように黒を纏った男が3人。

「またお前らか」
「面倒だな」
「・・・邪魔な奴らだ」


息を飲んだのは紛れもなく雷門イレブン。変わり果てた彼らの姿を見るのが苦行であるかのように彼らは呻いた。

「またこんなことを・・」

抑えきれなくなったのか、震える拳を握りしめ、一之瀬が言った。

「何故変わってしまったんだ・・円堂・・ッ!!」




なぜ?



彼はそれを、虫を潰すかのようにいともたやすく、嘲笑で返した。


「変わる?俺が?俺は何か、変わったかな?」


変わった?


浮かべた表情は氷よりも冷たいものだった。
背筋の凍る感覚に、当の本人の一之瀬は血の気が一気に引いていくのを感じていた。

「円堂は変わらないよ」
踏みだした足は、しっかりと円堂の隣で固定され、風丸は彼に微笑みかけた。

「何も変わらない。俺たちの円堂だよ」
「…そうか」

円堂はうなずくと、瞳を雷門へと戻した。

その言葉に、染岡が反応する。

「変わっちまったんだよ円堂は!!」

絞り出された彼の声には彼の悔しさと絶望が込められていた。それに雷門たちが呼応するかのように声を繋ぐ。

「そうでヤンスよ!!」
「俺たちのキャプテンはそんなんじゃなかったッス!!」

壁山は涙を浮かべながら必死に円堂へと叫んだ。

「黙れ!!!」

「・・ッ!?」

一喝して静寂を生んだ一言を叫んだのは、今まで微笑を浮かべていた風丸だった。

「何・・?」

「お前らのキャプテンじゃない!!」


俺たちだけのキャプテンだ――



「………ッ!」

その表情に、言葉を失った。

なんて、

なんて嬉しそうな、顔。



絶句した雷門たちを追い詰めるように、吹雪が笑う。
「そうだよ」
身を翻し、彼は自らのキャプテンの前へと飛び去る。

「もう僕たちだけのもの。君たちのキャプテンじゃないよ?」
「愚かだな」
「円堂は、変わらない。俺たちのキャプテンだ」

従者のように円堂の前へ進み出る彼ら。手を広げ、半身で庇い、マントで円堂を隠した。雷門たちに見切りをつけた鬼道は、刃物のように鋭い眼光で彼らを睨みつけた後、振り下ろされた凶器のように言った。

「もうここに用はないだろう、円堂?」

彼が雷門たちを見る目は、まるでゴミを見下ろすかのように冷たく、鋭いものだった。

「そうだな」

円堂はそれにうなずくと、視線を豪炎寺へと移した。
豪炎寺はその意図に気がつき、持っていた黒いボールを空へと放り投げる。
吹雪がそれに合わせるようにして地を蹴ると、黒い雲が辺りを取り囲んだ。

『クロスファイア・・ッ!!』

落とされたボールは地面を削り、強烈な威力で雷門イレブンを弾き飛ばした。
ボールは止めることも、はじくことも叶わない。
「うわあああ!!!」

黒い煙幕に閉ざされて、円堂たちの姿は、文字通り、煙へと消えた。
「くそ・・!!またかよ!」
染岡の悲痛な叫びも、また、塵となって、誰の耳にも届かなかった。






追いかけても追いかけても、影のようにすり抜けてしまう。





――そう、届かないのだ、もう、あの太陽には。











--------------------------------------------------------------------------------

太陽の所有権

--------------------------------------------------------------------------------














「楽しそうだな。アフロディ」
崩壊された学校に降り立ったのは、全てを見ていたヘラだった。
「そう?」

そう見えたのなら、きっと気の所為だよ。

金の髪を揺らして崩れた校舎の上から立ち上がると、アフロディは美しく何物も映さないその瞳で嗤った。
「なんにも楽しくなんてないよ」
下に降りたヘラを見下ろすように、くすりと笑う。
アフロディの横でただ横たわる雷門たちを、デメテルは見ているだけだった。
溜息も嘆息もそこには相応しくなかった。

ヘラはアフロディを見上げたままゆっくりと双眸を閉じると、また開いて、そうか、と呟いた。

ただ、それだけだった。

作品名:太陽の所有権 作家名:林願グ