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おかだゆな
おかだゆな
novelistID. 24152
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MAGICAL WORLD 2

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「私はコードの継承者だから、ここに来れるだけだ。死んでいるわけじゃない」
まるでそれまでの静けさなどなかったかのように、やる気のなさそうにそう答える。意味の分からない単語に多少混乱を覚えながら、さらなる説明を促すように彼女を見る。だがC.C.はまるで嫌がる子ども無理やり人前に押し出そうとする母親のような顔をしながらルルーシュに視線をやっていて、自分の思惑はまるきり無視されていた。ルルーシュはひとつ溜息を吐き、そして自分に眼を合わせようとしているのがわかったので、大人しくそちらを向く。
「さっきは、ここにいる人間は全てを忘れていくと言った。だが、例外はある」
すると何かを決意するように息を呑んだあと、「この家だ」と静かに言葉を吐いた。
「家?」
「そうだ、この家では、人は忘れない」
少し縋りたくなるような感情が自分の中に芽生えたのを無視しながら、出来るだけ平静を装って問い返す。
「つまり、ここでは全てを思い出せるのか?」
ルルーシュは、それがまるで予想していた質問であるかのように淡々と言葉を続けた。
「思い出す、わけじゃない。思い出せるようになるだけだ。忘れてしまったことは、全て集合無意識の中にあるから、取り戻すことはない。ただ今覚えていることを忘れることは、この家ではあり得ない」
言い切ると、また少しを息を呑んだ。今度も、何かを決意しているようだった。
「俺は、この家から出られないんだ。だからこの世界に来た時のまま、全部を覚えている」
今度こそ、本当に、目の前にいる人間が、一抹の寂しさを感じていることを悟った。そして聞きたいことがあるのに、それ以上口を開くことが難しくなってしまった。
「恐らく星刻…お前は、そうはならないと思う。俺とC.C.以外の人間は、強制的に夜になると外へ出なければならなくなるんだ」
自分の疑問など察していた、というようにさらりとそう返され、芽生えた希望のようなものが萎えていくのを感じずにはいられなかった。考えていたのは、中華連邦のことだ。天子様はまだ幼かった。彼女が作り上げていくものを、この眼で見ることが叶わなかった星刻にとっては、自身の死は未練に満ちた死だったのだ。だがその未練さえ感じられなくなるというのは、絶望にも等しい何かがあった。
「そう落胆するな」
女の声だった。まるで見透かしていたかのようにそう言われて、多少苛立ちを感じながらそちらを軽く睨む。
「そうだ、忘れたことさえ忘れるんだ。悲しくなんかないさ」
今度の声は、ルルーシュだった。それが嫌なのだと、子どものように主張したい気持ちを抑えながら、彼を睨んだ。忘れないでいられる彼にはわからない気持ちだろうという、そういう非難を込めていた。だが、同時に彼は彼なりの寂しさがあることは察してしまっていたから、どうにもならない思いの方が強くなってしまっている。行き場のない思いを、ただ自身の手を強く握りこむことで抑えるしかない。
「もし忘れたくないと願うなら、明日から毎日にここに来て、いられるだけここにいていい」
低く、落ち着いた声が振ってくる。彼は、既に立ち上がっていて、自分はそれを見上げた。
「…いいのか?」
「構わないさ」
何でもない風に言って、彼は一仕事終えたかのように軽く肩を回した。そして「お茶を一杯淹れるから、そうしたら今日のところは時間までは好きに家を見て回ったりだとか、したらいい」と事も無げに言う。ルルーシュがお茶を淹れる、とそう言ったことに自分が多少なりとも衝撃を感じているのだと気付いたのは、彼がカウンター式のキッチンへと姿を消した後だった。
「おい、ルルーシュ」
責めるような呼びかけが、未だにソファに寝そべる少女から発される。自分はそれが何を意味しているのかさっぱりだったが、カウンター式のテーブルの向こう側から、首だけをこちらに振り向かせたルルーシュが意を得たように「あぁ悪い」と言った。
「主治医の命令だ。今日一日は安静にしていろ、星刻」
「やっぱりノリノリじゃないか」と呟きながら満足そうに微笑んだC.C.がナース服を着ていることと、何故かキッチンでお茶を用意する彼が白衣を着ていることに改めて気がつくと同時に、寂しさに襲われた人間の先にあるものを垣間見てしまったのだと星刻思った。
作品名:MAGICAL WORLD 2 作家名:おかだゆな