【現パロ】夢うつつ
俺はチカちゃんの部屋でチカちゃんの姿を見て、小さく呟いた。
コンビニまで出かけていた俺がチカちゃんの部屋に立ち寄ってみると、チカちゃんはリビングのソファーで眠っていた。
トランクス1枚で!
「女ができてもこんな格好で寝てそうだよな」
苦笑して、コンビニで仕入れた品を冷蔵庫に放りこむ。
アイスクリームを一つだけ持ってチカちゃんのところに戻り、顔を覗きこんでみる。
チカちゃん、と小さく呼んでみたら、うーん、と言って身体を起こした。
ソファーに座ったままチカちゃんはキョロキョロと辺りを2、3回見渡すと、しばらく動かなかった。
何だかおもしろかったので、チカちゃんの横に腰を降ろして、アイスクリームを食べながら観察してみた。
「くしゃん!」
チカちゃんは急にくしゃみを一つすると肩を震わせた。当たり前の話である。俺が帰って来た時にはリビングは涼しいと感じる温度だったのだ。
立ち上がったチカちゃんはふらふらと自分の寝室の方へ歩いて行った。
ベッドで寝る気になったのだろうと気にも留めなかった。
いきなり、ガタン、という音が聞こえて、俺はチカちゃんの寝室に駆け寄った。
部屋の入り口辺りに、一人、うつ伏せになっている男がいた。
こけたな、これは。
チカちゃん、寝ぼけてんのかよ。
笑いをこらえながら、チカちゃん、と声をかけてみる。
チカちゃんはムクッと起き上がると、ベッドの上からタオルケットを引っ張り、自分の身体をくるんだ。そして、そのまま寝室から出ていくと、またリビングに戻って、ソファーに座ってる。
もう、何がしたいんだか、わかんねぇ。
チカちゃんの隣に座って、アイスクリームの残りを食べる。溶けかかっているので、急がねば。
「あれ?伊達?」
何で今頃気付くんだよ。
「よぉ」
としか返しようがない。
チカちゃんはじっと俺の顔を見てから、
「アイス」
と言った。
確かに食ってるよ、アイスを。でも、最後の一口を食ったところだ。
「欲しかったら、冷凍室にチカちゃんの分も…って、おい!」
チカちゃんは俺の肩を掴んできた。俺の肩を掴んだところでアイスは出てきやしねぇ!
「チカちゃ…」
名前を言い切る前に、俺は唇を塞がれた。
チカちゃんはあっさり舌を差し入れて来て、俺の口の中をなぶって来る。
「…あっ…」
解放された口から吐息がもれてしまった。
普段の俺の気持ちを知っててやってんのか?
マジでこいつの考えてることわかんねぇよ!
「チカ! てめぇなぁ!」
俺の抗議の声に口元だけで笑うと、
「ごちそうさま」
と抜かしやがった。
覚醒してやがったな、こいつ!
でも、こけたときは寝ぼけてたんだよな。じゃあ、いつからだ?
「おやすみ~」
そう言いながら、チカちゃんはずるずると俺にもたれ掛かってくるように倒れてきて、俺の膝の上で眠ってしまった。
「こら、チカ!」
チカちゃんは、んーというだけで動こうとはしない。
起こすのを諦めた俺は、チカちゃんの頭をゆっくりと撫でた。
いつもは重力に逆らうように四方に立てられている髪の毛も今日は下りていて、触り心地がいい。結構柔らかくて、さらさらだ。
モテモテなシステム部長さんの実態がこれだと知ったら、社のお嬢さん方は泣くだろうなあ、とさっきのチカちゃんの行動を思い出して、笑いが込み上げてくる。
まあ、そんな実態が見られるのも、今のところはこの部屋に入れる俺だけで。
秘密を知ってしまったような優越感。
そんな幸せに嬉しさが込み上げてくる。
……でも、こいつ、いつ起きてくれるんだ…?
<終>