魔法使いパロ
爆音で静まった廊下にさらなる絶叫が響いた。
「臨也アァッ!!」
粉塵がおさまり廊下の視界が開けた。丁度爆発のあった中心に、静雄=平和島は立っていた。防御しきれなかった閃光の残滓が、彼の身体の周りでぱきぱきと音を立てていた。後天性の金髪は突風を受けたように乱れ肩は上下していた。そして彼の左の手のひらは浅く一線に裂け、出血していた。顔は鬼神のごとく怒りに塗られていた。その眼はある一点を揺らぐことなく睨んでいた。
視線の先には黒髪の青年、臨也=折原がいた。彼は杖を静雄に向けて構えたまま不敵に笑った。
「全く、とんだ化け物だね」
刹那臨也の頬に一筋の紅が伝った。軽く指の腹で拭えばその傷は跡形もなく消え去った。自分で開発した呪いがここまで簡単に破られたことに臨也は苛立ちを覚え、また喜びを覚えた。
そして臨也は再度杖を振った。反射的に静雄も杖を手に取り、正面を突いた。
にやりと笑った臨也の顔を見てしまったと静雄が気付いた時にはもう遅かった。二つの閃光はぶつかった衝撃で強い光を放ち、その輝きは目が眩むほどのものだった。これが臨也の狙いだった。
「じゃあね!シズちゃん!」
臨也は素早く身を返して走り出した。
「ッ……待ちやがれっ!」
あまりの明るさに眩んだ視界のまま、静雄はその背を追うために駆けだした。
やがて光が消え去ったが、しんと静まり返ったぼろぼろの廊下を歩く生徒はいなかった。
「あーあ、行っちゃった」
「次もさぼるのか、あいつら……」
その中、ひょこりと二つの頭が柱の陰から現れた。新羅=岸谷と京平=門田である。二人は荒れた廊下を目前にして肩をすくめた。
「これ、直しとこうか」
そう言って新羅は杖を振った。すると粉々になっていたはずの壁や柱は引き戻された粉塵もろとも、時間を戻されたかのように集まりパズルのように組み上がっていき、亀裂が消え、文字通り修復された。
それを見て、京平は感心した。
「本当、お前がいなかったらあいつらどうなってることか」
「おかげさまでこの系統の魔法はもう八割ぐらい習得したよ」
「医者と一緒に癒者でもやったらどうだ」
「考えとくよ。でも飛び散った肉片は戻しても意味がないからなぁ」
その表情はどこか恍惚としていた。
「恐ろしいことを言うな!」