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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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「笑わない夢は、白む霧のよう♪」

 ちらちらと雪が降る街中。一人の少女が暢気に歌いながら歩いていた。
 少女の服装は学生服にマフラーとシンプルであった。そして、手には買い物袋をぶら下げて歩いていた。
 道を少し外れ、人気が無い道に少女は入って行く。

「さっさと帰って紅魔郷やろ……待ってろおぜう様!」

 そんな決意を声に出した。声に出してから恥ずかしくなったのか、キョロキョロと辺りを見回した。

「おんや?」

 そして、少女は『それ』を見つけてしまった。
 塀と塀の間に存在する『それ』を。

「これ……隙間?」

 少女は『それ』を知っていた。まるで空間そのものが切り開かれたようなもの。その隙間の中からは不気味な目が大量に覗いていた。
 『それ』は、隙間と呼ばれる空間。空間とまた別の空間を繋げる境目。

「あにゃー?何でこれがこんなところに?」

 少女はその隙間へと近づく。
 少女はその隙間が本当に存在するものだと思ってなかった。二次元の中だけのものだと思っていた。
 だから、少女はその隙間が本物か調べる為に近づいた。

「おぉ~」

 関心深そうに意味も無く頷く少女。
 少女は隙間の後ろを調べようとしたが、塀と塀の狭間にそれは有るのだ。狭すぎて後ろに回って調べることは出来ない。
 だから、少女は別の方法で調べることにした。
 近くに落ちていた小石を拾い、隙間へ放り投げた。
 隙間はその小石を飲み込んだ。

「うん、解らん」

 あっけらかんと結論を述べる少女。『今の自分』では解らない。だったら、やることは一つだけ。

「入っちゃえ」

 少女は歩み寄った。
 もしこれが、自分の知っている通りのものだったら、自分に害が無いことが解っている。
 ではその自分の知識と感覚が間違っていた場合。少女は、それでも良いと思った。どちらにせよ、何かが起こる。そう期待した。

「うわっ、とっとっと……」

 隙間まで後一歩というところだった。
 突然風に押され、バランスを崩しかけた。
 塀に手をつき、バランスを整えた。

「ふぅ……危ない危ない」

 そして少女は顔を上げた。

「あり?」

 顔を上げた先には、もう隙間は無くなっていた。

「どーしてよー!」

 其処には何も無かった。先程までは確かに有った空間の隙間が。
 少女は叫んだが、その叫びを聞くものは誰一人として居なかった。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶