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第４話　
前編　　新しい記憶と思い出とツナシタクト


記憶を消した後おばあさんはタクトの言う通り、道に倒れてたと伝えた。
タクトはその後、助けてもらったおばあさんにお礼をいって、自分の寮に帰った。
その時にはすでに夜の９時を回っていた。

次の日、タクトはいつもの笑顔で学校に登校していた。
教室に入るとワコがいたので普通に「おはよう、ワコ」と挨拶をした。
すると、ワコはタクトの手を引っ張り、どこかへつれていった。
そのことについてクラスメイトがしばらく騒いでいた。

「…わ、ワコさん？なんでそんなに怒っているのかなぁ…僕、何かした…？」
ワコは軽々しく知らない顔をするタクトを見て余計に怒った。
「…もうっ……どれだけ心配したと思っているの！！」
「え？？」
「ずっと、学校こないし、寮にいってもいないし！！」
たまっていた言葉を一気に吐き出すわワコ。
しかし、タクトの頭の上で？マークが何個も並んでいた。
「ご、ごめん、ワコ…僕、今２週間前の記憶がないみたいなんだ…」
「えっ…」
ワコは何かの冗談かと思う。
「おばあさんの話によると、道に倒れてたらしくて…」
「じゃあ、本当に…？？」
「う、うん」
「つい、この前までスガタ君のことですごく落ち込んでいたんだよ？」
「すが、た君？ワコの友達？？」
さらにびっくりするワコ。
「何言ってるの？スガタ君だよ、シンドウスガタ」
「誰？僕、知らないんだけど…」
(そんなっ…まさか本当にスガタ君まで忘れちゃったの！？)
その後タクトはワコが怒っていると勘違いし、ひたすら謝り続けた。
タクトには？しか思い浮かばなかった。
ーーー
夜、ワコはシンドウ邸に訪れていた。
スガタにタクトの事を伝えないと、と思いここに来たのだ。
「ゴメン、今は二人で話しがしたいの…いいよね」
真剣な眼差しでスガタに言う。
「わかった…二人とも席をはずしてくれ、すぐ終わる」
スガタはジャガーとタイガーに命じる。それに二人は素直に従う。
「…」
ワコは黙っている。
「話しってなんだい？あるからここにきたんだろ」
「…なんで、そんな平気な顔で居られるの？タクト君がどれだけつらい思いしたか、分かってるんでしょ！！」
スガタは驚く。まさかワコに怒られると思ってもいなかったから。
「ワコには関係ない、あれは俺とあいつの問題だ」
「まだ、そんな事いってんのっ…タクト君は…タクト君は…」
なぜか、涙がワコの頬を伝う。タクトの気持ちを考えると苦しくて押しつぶされそうだった。
「ワコ、落ち着け」
「落ち着いてなんかいられないわよっ…もうッ…タクト君と逢えないかもしれないのにッ…！！」
「！！」
スガタはワコを見てタクトに何かあったと覚った。
「…何かあったのか」
スガタは静かに聞く。するとワコがその場で崩れ落ちそうになる。それをそっと支える。ワコはスガタの胸に顔を埋め言った。
「…タクト君がッ……スガタ君の事ッ…何も、覚えてないって…記憶が、曖昧にッ…なってる」
「…ッ！？」
まさか、こんなことになっているんて思いもしなかった。
ワコはまだ目の前で泣いていた。
続く

中編　記憶の中のスガタ⇔記憶の外のスガタ

ワコはずっと泣いていた。
しばらくして、少し落ち着き家に帰っていった。
その後スガタは自分の部屋で黙りこんでいた。
「…タクト…」
初めて後悔した。
自分の愛するものが自分を忘れてしまったのだから。
消えてしまったも同然だ。

スガタがタクトに冷たくしていたのには理由があった。
だんだん、紀羅星の力が増幅している中スガタは紀羅星に一目置かれていた。
自分がタクトの傍に居ればタクトの身が危ないと考えた。

正直、気が狂いそうだった。死にそうな顔をしているタクトを見るのがつらかった。
でも、こうするしかなかった。すべてが終わったら自分の考えを言うつもりだった。
まさか、タクトがそこまで落ち込むとも考えていなかった。

ワコが言っていた。
「スガタ君が目覚めただけでも嬉しいって…とっても…嬉そうだったッ…」
タクトはそれでもスガタの体を心配していたのだ。
だけど、もうそのタクトとは逢えない。

これは罰だ。タクトととの約束を破った罰なのだ。
(俺はいったいどれだけ罰を食らえば許されるのかッ…)
ーーー
ワコはタクトを助けたというおばあさんのもとにいた。
なんとか、タクトにスガタのことを思い出してもらおうと、記憶を思い出す鍵を探していた。
「おばあさん、お願いです、タクト君に何があったのか教えてください」
必死に頼んだ。最初はだめだといっていたおばあさんはようやく教えてくれた。

「…あの子は強いよ…」
「え？」
ワコにはそのおばあさんがいった言葉の意味がよく分からなかった。
「あの、タクトという坊やが記憶を消して欲しいとわしに頼んできたんだよ」
「記憶…それって…」
「シンドウスガタの記憶をね…このままうじうじしていたら前に進めないって…」
「…」
「それに…」
「それに？」
「もし、本当に好きなら、思い出せるからって…」
「タクト君…」
(きっと、二人には言葉が足りてなかったんだ…ほんと、不器用なんだから)
ワコはなぜかすっきりしていた。まだ、前みたいに戻れるチャンスがあると分かったから。
ワコはおばあさんにお礼をいって笑顔で帰ったのだった。
続く

後編　ワコの説教

ワコは帰ってきた後、またシンドウ邸に来ていた。
そして先ほどの出来事をスガタに伝えた。
「本当に好きなら、思い出せるって笑顔で言ったんだって…スガタ君だって何か考えがあってあんな行動に出たんでしょ？」
「気づいていたのか…？」
「昔から、不器用だからね…タクト君も同じ」
「同じ…？」
スガタにはワコが言っている意味が分からなかった。
こんなに貪欲に愛を求めたことなど、なかったから。
「タクト君、言ってたでしょ？この島にきて第一イベントとして恋がしたいって…二人ともどうしていいか分からなくて、悩んで、悩んで、でも、分からなくて…それで自分を犠牲にして結局こうなったんだよ」
ワコの言う通りだ。
自分を犠牲にした結果二人は危うく離れ離れになるところだった。
「……そうかも、しれないな……二人で幸せになるなんて、考えたこと…なかったかもな…タクトが喜んでくれればそれで幸せだったから」
(俺は、タクトの傍に居たかっただけ…それ意外は望まない…)
「もっとさ、スガタ君はわがままになってもいいんだよ、今まで我慢してきたんだから」
スガタには不安がまだ、あった。
これ以上望んでしまったらまた罰がくだるのではないかと…
「ワコ……俺は…どうしたら、いいんだ？…教えてくれ…」
スガタはワコの体を抱きしめていた。
今はただ誰かのぬくもりがほしくて。
「スガタ君……泣かないで…一度失敗したんだからもう、大丈夫だよ」
スガタはいつのまにか泣いていた。
ワコを抱きしめた途端にタクトがたくさん流れ込んできたから。
それをワコはやさしく抱きしめかえす。
「大丈夫、大丈夫だから……これからはあたしにちゃんと相談するんだよ？」
「ああ……悪かった、ワコ」
ワコはなんだか昔のスガタと話している気分だった。