第6話 タクトという名のベッド
タクトとスガタはまた新たな道へ走り出そうとしていた。
だが、その道はひどく不安定で今にも消えてなくなりそうだった。
そんな道を二人は偽りの感情をもって歩いていた。
ーーー
今日はシンドウ邸に遊びに来てるタクト。
仮の恋人だと分かっていてもやめられない。
何度も悲しい嘘を欲してしまう自分がいる。
(君はいつまで僕を愛してくれるのかな……)
スガタを見るとどうしてもそう、思ってしまう。
すぐ、終わるのが目に見えていても少しでも長く…といつの間に神に祈りを捧げている。
「どうしたんだ、タクト?さっきからボーっとして…」
「え、あぁ…なんでもないよ」
スガタは人がいからタクトにとっては余計にたちが悪かった。
ぎゅっ…
「スガタ…?」
誰も居ないことをいいことに後ろから抱きしめられた。そのときタクトの心には棘のようなものが刺さった。
愛されているのは自分ではないから。
苦しくなった。息がつまりそうだった。…だけど、拒めない。
(…スガタだって、つらいんだよな……)
「どうしたの、あの子が恋しくなった?……僕はここにいるから……」
自分を抱きしめている真っ白で細い腕をやさしく掴む。
「……タクト」
スガタは安堵の表情を浮かべていた。
それをみたタクトはもう何もかもどうでもよくなった。
スガタのその顔を見るだけで安心するのだ。
そのまま二人は眠りについた。
ーー
スガタはそのことがあってから、あまり眠れないらしい。だが、こうして傍に居るとすやすやと子供みたいに眠っている。タクトはスガタのために何か、したかった。
『傍にいてくれ……僕が寝るまででいい』
スガタに助けを求められた。
嬉しかった…。
その時間だけは自分を求めてくれるから。
『…寝るまでじゃなくて、ずっと居るよ…だから、安心して…』
これがよく二人で昼寝をするきっかけとなった。
続く
作品名:第6話 タクトという名のベッド 作家名:守山 潤也