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馬鹿な男

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公園のベンチに一人座り彼を待つ。
都会に珍しく雪が降っている。しかもぼた雪。どんどん積もる水分の多い雪はうっとおしいことこの上ない。
それでも帰ることなく彼を待つ。
ここで待っている、と彼に告げた時間からとうに六時間は経っているが。
「流石に寒いなぁ」
かじかむ手をすり合わせ、身に纏うコートの前を閉じ、ささやかな防寒に励んでみた。寒いのは変わらない。身体も、心も。
「わかってたはずなんだけどな…」
彼が来るわけない。
ひどいことをしてしまった。嫌われても仕方ない。いや、事実もう嫌われてしまっているだろう。
それでも今、彼が来ることを諦めきれないのは、もしかしたらという希望があるから。
優しい、馬鹿みたいに優しい彼が、仕方ないですねと言って苦笑を浮かべ近づいてくる姿を想像してしまうから。
「馬鹿なのは、俺の方か」
好きだ。彼が好きで彼を取り巻く全てに嫉妬して憎んで、彼から全てを取り上げて。反応が見たかったから自分すらも彼の側を離れて絶望させて。
それで、それで
「会いたいなぁ、帝人君」
結局手放しきれなくて縋りつこうとしている俺は、本当に馬鹿だ。

彼と結ばれていた赤い糸をプチンとハサミで切ってしまったのは俺だったのに。

本当に、馬鹿。

作品名:馬鹿な男 作家名:セイカ