二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
璃琉@堕ちている途中
璃琉@堕ちている途中
novelistID. 22860
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

エナメルクラッシャー

INDEX|1ページ/1ページ|

 



雨が降っていた。
土砂降りだった。
警報が発令されていた。
危ないから泊まって行きなさい。そう言われたので、従った。

「綺麗な爪だよねー。塗り甲斐があるというものだ」

ベースコートの乾きを確認し、彼はピンクのマニキュアを滑らせる。
私の指を捧げ持ち、紅い瞳で愛でながら、一本一本丁寧に。

「人形みたいだね」

ソファの上で向かい合い、私は彼にされるがまま。
シンナーの匂いが鼻につく。それと、彼の香水と。

「よし、出来た。次はそっちの仕上げだ」

乾いていない左手の五枚に気をつけながら、私は黙って右手を差し出す。
彼は右手の刷毛を瓶に仕舞い、それから中指のピンクの末端にそろりと触れた。

「このまま、君をここに閉じ込めたいな」

雨が降っていた。
土砂降りだった。
警報が発令されていた。

「俺だけの、君でいてよ」

彼の唇が、私の皮膚を捕らえた。
押し当てられたそれは、冷たく乾いていた。
私は黙って、窓の外を眺めた。
遠くで雷が轟いた。ついで、空を煌めいた。
警報の解除は、当分先だろう。

「人形は嫌い」

それだけ告げるのに、私は力を使い切ってしまった。彼が、私の指を食んだからだった。
こんなに乱暴な誓いの口づけを、私は知らない。





『エナメルクラッシャー』

(大雨洪水警報、暴風波浪警報)
(それから恋の病発症警報発令中)